【内田雅也の追球】失敗を取り返す「覚悟」 高校野球のように一戦ごとに強くなるチームでありたい

[ 2022年3月19日 08:00 ]

オープン戦   阪神3-2オリックス ( 2022年3月18日    京セラD )

<オ・神>7回、梅野は左中間へ適時三塁打を放つ
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 それにしても、島田海吏がバントで空振りしたのには驚いた。球界随一の投手、山本由伸のほぼ真ん中のフォークにバットがかすらなかった。三振である。

 ボール球ならまだしもストライクをバントで空振りとはあまり目にしたことがない。山本の球はバントも難しいわけだ。

 だからといってミスはミスである。4回表無死一塁で島田は送りバントを失敗した。5回表無死一、二塁では梅野隆太郎がスリーバント失敗(ファウル)で三振した。2度の送りバントはともに失敗に終わった。

 守備面でも失策から失点した。5回裏先頭の何でもない二ゴロを糸原健斗が弾いた。最後のバウンドは少しはねたかもしれないが、処理しなくてはいけない打球だった。続く二塁ベース寄りのゴロもアウトにすれば美技だが内野安打にした。

 バントとエラーは毎年のように指摘されてきた課題である。この夜の試合だけで、いまだに解消されていない、と断じるのは控えたい。毎年少しずつ成長していると信じているからである。

 さらに書けば、課題解消は練習期間のキャンプやオープン戦中だけの問題ではない。開幕し公式戦を戦いながら成長していきたい。甘いとの批判もあろうが、高校野球のように一戦ごとに強くなるチームでありたい。

 2月、沖縄でのキャンプ中、テレビで見た北京冬季五輪カーリング女子日本代表を思う。準決勝でスイスを破った際、吉田知那美が話した。「4位上がりの私たちの最大のアドバンテージはラウンドロビン(1次リーグ)で他のチームよりもたくさんのミスや劣勢を経験できたこと」。失敗の経験を生かし、前夜、1次リーグで敗れた強敵に雪辱したのだった。

 吉田知は銀メダルで大会を終えた後、印象的に話していた。「苦しい舞台、大変な顔、辛そうな顔をするのは誰にでもできる。楽しむにはたぶん覚悟がいる」。常に笑顔を忘れず、明るく前向きに戦った彼女たちには「覚悟」があったのだ。

 それは監督・矢野燿大就任から4年目、阪神が目指してきた姿である。

 だから失敗した後の打席に注目していた。島田は右中間へ快打(右飛)、梅野は左中間突破の適時三塁打、糸原は右直の好打だった。失敗を何とか取り返そうと奮起した姿を書いておきたい。

 苦しい時の方が多いシーズンに、前向きに挑む覚悟は備わっているとみている。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年3月19日のニュース