大谷の魔球スプリットを「Ninja」が分析 直球と錯覚誘うジャイロ回転

[ 2021年8月30日 18:30 ]

25日のオリオールズ戦に先発したエンゼルス・大谷(撮影・沢田 明徳)
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 エンゼルスの大谷翔平投手(27)は、投手最高の栄誉であるサイ・ヤング賞の候補にも名前が挙がる。「Pitching Ninja」の名前で日々、投球動画をツイッターに投稿するロブ・フリードマン氏(54)も「投手・大谷」を評価する一人だ。約32万4000人のフォロワーを持ち、現役メジャーリーガーとも交流がある投球分析家が、投手としての進化について本紙に語った。(奥田秀樹通信員)

 「Pitching Ninja」のファンは日本でも増えている。日系2世の妻を持つフリードマン氏の本職は、アトランタ在住の弁護士。昨夏、あのダルビッシュ(パドレス)が昨年のサイ・ヤング賞投手、ビーバー(インディアンス)の「スパイクカーブ」の握りを知りたいと連絡を取り、その後、共演したYouTubeでは自身の球種の握りも公開し話題となった。

 今季の開幕前、米球界では「大谷は打者に専念した方がいい」という声が圧倒的だった。しかし、フリードマン氏は違った。「多くの人は大谷をまず打者として見ていたが、私は日本ハム時代は打者より投手の方が優れていると感じていた。100マイル(約161キロ)を超える直球と鋭く落ちるスプリット。マウンドでの堂々たる態度。あんな投手はメジャーにもそういない」。その期待通り、今季は6月から7連勝中で、8勝1敗。初の2桁勝利も見えてきた。
 同氏の1日の投稿数は平均30回。特に異なる球種の軌道を同時に見せる「ピッチオーバーレイ」など、動画編集ツールを駆使した画像は人気だ。投球分析家として着目するのは、「メジャー全体でも最高の武器」と称するスプリット。被打率・074は驚異的といえる。なぜ大谷のスプリットは打ちにくいのか。日々画像を拡大したり、スローモーションで細かく分析している同氏はこう指摘する。

 「ユニークなのはジャイロスピンがかかっていて、真っすぐと同じ軌道から落ちる。一般的にスプリットはアームサイド(投げる腕の側=右腕ならシュート気味)に落ちていくのにね。だから打者は直球と錯覚する。今季良くなったカットボールもジャイロスピンがかかっている。だからこの2つの球種も見分けがつきにくい」

 ジャイロ回転とは、回転軸が進行方向を向き、ドリルのようならせん(ジャイロ)回転をいう。データ解析システム「スタットキャスト」によると、メジャー投手のスプリットは平均で11インチ(約30センチ)横に動いて落ちるが、大谷は回転軸が傾いていないため2インチ(約5センチ)右に動く程度。つまり、ほぼ真下に落ちている。これが打者の錯覚を生む。

 球種以外でもフリードマン氏が注目していることがある。大谷がウオームアップで使用するプライオボール(重さの違う6種類のボール)とポケットサイズのスピードガンだ。

 「プライオボールをきちんと投げるには、腕を正しく振らないといけない。どこにも強いストレスがかからないように、体がアジャストして効率的に投げられるようになる。さらにスピードガンで球速も確認している。思い切り投げた感覚があっても、球速がそれほど出ていなければ、お尻の使い方が悪いからとか原因を探れる」

 プライオボールは近年、急速に普及しているが、携帯用スピードガンを使う投手は少ないという。「大谷はこの2つを使うことで、試合に安定したメカニックで臨める。彼の成功で、今後は投手の準備の仕方が変わっていくのではないか」。制球力の安定は秘密のアイテムにあると指摘し、大谷のルーティンはメジャーのトレンドになるとも指摘した。

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