智弁学園・前川 意地の3安打も一歩届かず「一生懸命戦ってきたことを誇りに」夢の続きは「プロ」で

[ 2021年8月30日 05:30 ]

第103回全国高校野球選手権大会決勝   智弁学園2ー9智弁和歌山 ( 2021年8月29日    甲子園 )

<智弁学園・智弁和歌山>7回2死一塁、二塁打を放つ智弁学園・前川(投手・中西)=撮影・河野 光希
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 智弁学園・前川右京は次打者席で終幕を迎えた。9回2死、代打・足立風馬が三振に倒れると、うなだれる背番号14の肩に手を回し優しく声をかけた。「大丈夫やで、前を向こう」。ベンチ前では泣き崩れる先発左腕・西村王雅を支えた。選抜で結果が出せずに敗れ、号泣した弱い前川はもういない。強く成長した男の姿だった。

 「自分も涙が出てきたが最後まで全員で一生懸命戦ってきたことを誇りに前を向こうと思った。最高の相手と試合できてよかった」

 横浜との2回戦以来の1番で躍動した。4点の先制を許した初回に先頭で中前打を放ちナインを鼓舞。相手エースと対峙(たいじ)した5回2死から右前打、7回2死一塁では決め球の低めフォークを捉えて右翼線二塁打し、意地もみせた。

 選抜後、落ち込んでいると2つ上の兄・夏輝さんから厳しい言葉をもらった。「試合に出て苦しむのは全然大したことじゃない。試合に出られずメンバーにも入れずに苦しんでいる子たちの思いを考えろ」。津田学園で19年春夏の甲子園に出場した兄の言葉は胸に響いた。チームのために戦った最後の夏は2本塁打を放ち、打率・455(22打数10安打)7打点。初の決勝進出に貢献した。

 日本一には届かなかったが、次の夢がある。「高卒プロが目標。岡本選手(現巨人)のような柔らかい打撃ができるようになりたい」。涙をこらえて前を向いた。(中澤 智晴)

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2021年8月30日のニュース