阪神・秋山 意地の7勝 “平凡”自覚するからこそ、大事にする仲間「みんなに助けてもらって生きる投手」

[ 2021年7月10日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神4-1巨人 ( 2021年7月9日    甲子園 )

<神・巨(13)>先発の秋山 (撮影・奥 調)
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 阪神は「ウル虎の夏2021」と題された9日の巨人戦で7回表降雨コールド勝ちし、前半戦最後の伝統の一戦3連戦に先勝した。プロ初の中4日で先発した秋山拓巳投手(30)が6回0/3を1失点の力投で7勝目。前回4日の登板ではリードした4回の打席で代打を送られる屈辱を味わった右腕が意地を見せた。2位巨人とのゲーム差を3・5に広げ、10日も勝てば4試合を残して08年以来、13年ぶりの首位ターンが確定する。

 いつ試合が終わろうと変わらない。最後まで投げ切る――。その思いだけで秋山は腕を振った。登板後の第一声。30歳が、この夜に懸けていたものは、やけどしそうに熱かった。

 「後がないとかじゃなくて、とにかく意地を見せたろうと思って4日間練習してきた」

 4日の広島戦では、リードしているにも関わらず4回の好機で代打を送られた。3回2失点での降板。怒り、無念、さまざまなものを胸に残したまま、この夜を迎えた。12年目で初の中4日登板。序盤から直球は走り、変化球も低めに制球された。5回にウィーラーにソロを被弾したが、6回は2番坂本から3者凡退。7回無死二、三塁とピンチを背負ったところで強雨で中断となり、そのままコールドゲームが宣告された。

 気迫の投球の源は前回46球で降板した余力だけではなかった。限られた調整期間では「(体の)全体を振っていて腕が強く振れてなかった」とフォームを修正。左肩に壁をつくり、上体のブレをなくした。雪辱の舞台は3連敗すれば首位を明け渡す大事な初戦。簡単でなかったマウンドで仕事を果たした右腕に対し「オレに代えられた悔しさをぶつけて」と話していた矢野監督も「そういうのも感じたし、本当にボールにすごく気持ちが乗っている、素晴らしい投球だった」と目を細めた。

 驚くような球速や魔球と呼ばれる変化球も持ち合わせていない。“平凡”だと自覚するからこそ、仲間の存在が大事になる。「絶対的な力があるわけじゃない。みんなに助けてもらって生きる投手。僕が投げる時に助けてもらえる、頑張ろうと思ってもらえる投手にならないと生きていけないから」。登板しない試合も可能な限りテレビで観戦し、翌日には投手、野手に関わらず声をかける。「“あれどうやったん”とか“あの球良かったな”とか。一緒に戦っている意識は持って。それはずっと変わらない」。

 ベンチで次々にエアタッチを交わす。「雨天コールドで、中継ぎも使うことなく試合を終えられたので良かったかな」。「意地」で始まった夜は、頼れる仲間とつかんだ会心の1勝に変わった。(遠藤 礼)

 ○…阪神が7回表無死、降雨コールドのため4―1で巨人に勝利。秋山は6回0/3、1失点の完投勝利となった。秋山は通算8度目の完投勝利で、9回未満では初めて。今季の巨人戦は1回戦の4月6日も7回裏終了降雨コールド、6―2で勝利しており、西勇が7回完投勝利。このカードで阪神投手が9回未満の完投勝利はほかに
47年8月17日 御園生◎
74年5月22日 江 夏
77年6月23日 古 沢
(◎は完封)
があり通算5度目。シーズン2度は今回が初めて。

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