中畑氏 なんでや、阪神…許せない。トリはまだやれる

[ 2019年9月3日 09:00 ]

打撃練習を行う鳥谷(撮影・北條 貴史)
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 【キヨシスタイル】なんでや、阪神。タイガースひと筋で通算2000安打を打った功労者に対していきなり「引退してくれないか?」はないよ。しかも鳥谷本人に「タイガースのユニホームを着てやるのは今シーズンで最後」と公表させるなんて…。許せない。

 タイミングも最悪だ。まだ試合が残ってる。逆転してCSという可能性もあるんだよ。残暑の中にも秋風を感じる今日この頃。「戦力外」という嫌なフレーズが耳に入ってくる季節だけど、鳥谷は球団が一方的に処遇を通告していいレベルの選手じゃない。

 功労者に対する対応の仕方には順番があるはずだ。まず本人の意思確認からスタートするのが筋だし、誠意。どういう考えを持っているのか。最後は必ず辞めなくちゃいけないときが来る。球団がコーチの道を用意したり、いろんな選択肢を準備して話し合い、互いに納得できる着地点を見つけるのがベストだ。

 そんな段取りをすっ飛ばして、いきなり引退勧告じゃ選手は答えようがない。メディアを通じて「今シーズンで最後」とファンにメッセージを送ったら、もう戻れない。コーチなり何らかの形で残るという話があったかどうかもなかった。これも悲しいよね。

 私が引退したのは1989年。一塁から三塁に戻り、1番で開幕を迎えながら右手薬指を脱臼して早々に離脱した。その間、岡崎郁や駒田徳広が活躍。復帰後も出番が極端に減った。もはや戦力として期待されてないと悟って引退を覚悟し、応援団長に専念。ベンチで大声出していたら藤田元司監督が「引退してもすぐユニホームは脱ぐな。コーチとして手伝ってくれ」と言ってくれた。フロントはフロントでいろんな道を用意してくれてね。結局はネット裏を選んだんだけど、巨人の誠意は十分感じたよ。ありがたかった。

 通算1294安打の私なんかより、ずっと球団に貢献してきた鳥谷。阪神には誠意ある対応をしてほしかった。

 そういえば江夏豊さん、田淵幸一さん、掛布雅之…。私が戦った年代に阪神でいい終わり方をした生え抜きのスター選手はいないんだよなあ。(本紙評論家・中畑 清)

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2019年9月3日のニュース