年齢と闘い続けたイチロー 衰えと「フライボール革命」に逆らえず 「50歳まで現役」幻に

[ 2019年3月22日 05:41 ]

ア・リーグ   マリナーズ5-4アスレチックス ( 2019年3月21日    東京D )

セレモニーに登場したイチロー(撮影・吉田 剛)
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 イチローは「年齢」という壁に挑み続けてきた。「50歳まで現役」と公言するようになったのは、メジャー2年目を終えた02年ごろだ。当時29歳。イチロー自身、体力的にも技術的にも「50までやれる」という自信があったからだろう。だが、それは「大好きな野球を長く続けたい」といった個人的な目標だけではない。イチローは36歳だった09年12月の本紙の単独インタビューでこう話している。

 「野球界はいろんなものが進化している。時代とともに前に進んでいくのは当たり前のこと。選手寿命だけがなんとなく40歳前後というのは、おかしいと思いませんか?僕は許せないんですよ。40だからああなって、50だからこうだろうっていう。単純に野球を長くやりたいというのはありますけど、先輩たちが打破できなかったものを僕たちが崩していく。おかしな価値観や概念を壊していく行為も大事なことだと感じています」

 野球界の常識を覆す。それが使命でもあると感じていた。そのためにトレーニング、食事を含めた普段の生活もストイックに取り組んできた。40代になっても体脂肪率は7%台を維持。メジャーでは15年から現役最年長野手であり続けた。

 しかし、近年は三振が増え、盗塁も17年以降は1つと激減した。最大の武器であるバットコントロールとスピードで衰えが目立つようになった。MLBの野球も変わってきた。トレーニング方法の進歩、データ分析や動作解析の進化により、投手の球速は年々アップ。直球の平均球速は01年は88・5マイル(約142キロ)だったが、昨季は93・6マイル(約151キロ)で、全直球の22%が95マイル(約153キロ)以上を計測した。これに対抗するために打者はスイングスピードや打球角度を重視するようになり、「フライボール革命」なるトレンドも生まれた。ある意味、イチローが存在価値を見いだしてきた野球とは真逆のスタイル。長打力がある打者が評価され、高齢選手は敬遠されるようになった。

 そんな中でイチローはもがき苦しみながら闘ってきた。12年7月にマリナーズからヤンキースに移籍して以降は「毎日、その日を懸命に生きてきた」という。「50歳まで現役」という目標にたどり着くことはできなかったが、イチローの挑戦はMLBの歴史に刻まれるだろう。 (甘利 陽一)

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2019年3月22日のニュース