イチロー、父・宣之さんとつくり上げた打撃の原型 “全力投球”トス打撃が生んだ広角打法

[ 2019年3月22日 09:45 ]

イチロー現役引退表明

主催の野球大会に出席したイチロー(左)と父の鈴木宣之氏
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 イチローは少年期に、父・宣之さん(76)と二人三脚で打撃の原型を形成した。それは一風変わったトス打撃。通常は下手からの緩い球を同じ間隔で打つが、全力投球を打ち返した。

 さらに惰性でバットを振らないよう、全力投球の中にスローボールが交ぜられた。速球を打ち返すには敏しょう性に加え、動きの無駄を省く必要がある。突然来る緩い球で反射神経が発達した。

 このメニューでは両手が左肩近くで保たれる、イチローの打撃で最も特徴的な動きも形つくられた。前方に体重移動する際、グリップはぎりぎりまで頭の後方にある。前に踏み込みながら力をため、最後の瞬間に両手が投球に最短距離で出る。グリップが残っていることで、変化球や緩急への対応が可能になった。本人は「最終的に腕が(頭の後ろに)残るから前に動けばいい。動いてこっちに来るもの(投球)をじっと待っていても反応は良くない。テニスでも、じっとしているところから速いサーブを打ち返すのは難しい」と極意を説明している。

 「相手は左右、高低以外にもチェンジアップとかで前後の奥行きを使ってくる。そしてスプリットやカッターもあるのが現代の野球。これに対応するには受けてしまっては駄目」。広角打法の核心は、向かってくる球に自ら近づくことで、父子による傑作でもあった。

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2019年3月22日のニュース