「最後は岩瀬を先発転向させたい」権藤氏の言葉のワケは…

[ 2018年10月9日 10:00 ]

 残してきた記録と、実際の人物像にこれほどギャップのある選手もいない。プロ野球記録、それも2度と破られないような金字塔を次々打ち立てても、いわゆる“オーラ”のようなものを感じたことはない(失礼)。派手な服装は似合わず、華やかなパーティーではいつも居心地が悪そう。今季限りでついに現役引退する中日の岩瀬さんはそんな人だ。

 同じく今季でユニホームを脱ぐ浅尾拓也が以前、笑いながら話していた。「年下の選手を食事に誘いたいのに、遠慮して“タク、お前が声をかけてくれない?”って言ってくるんですよ。断られたらショックなんでしょうね」。記録という観点では今世紀最高の投手と言っても過言ではない左腕だが、例えば電車で同じ車両に乗っていても気付かないような控えめな物腰は、ずっと変わらなかった。

 もっとも、起用する立場から見ると、その存在感は絶大だったようだ。あの落合監督が「毎試合、どうやって岩瀬につなぐかだけを考えていた」と話していたことがある。4度の優勝を取材した記者として「落合竜8年間のMVP」を選ぶなら、迷わず岩瀬さん。当時は「岩瀬でやられたら仕方ない」というのは監督、コーチ、選手のみならず、報道陣も共通認識だった。

 12年に投手コーチとして指導した権藤博氏の言葉が印象に残っている。「オレは最後は岩瀬を先発に転向させたいんだ。これまでずっと“チームの勝利”、“先発投手の勝利”を背負って頑張ってきた。最後ぐらい“自分の勝利”のために投げさせてやりたい」。その偉大さは、落合氏や権藤氏のような野球を知り尽くした人ほど痛感するのだろう。

 引退試合は13日のナゴヤドームでの阪神戦に決まった。今は阪神担当の自分は、最後の勇姿を生で見られるのがうれしい反面、あれほどの投手の最終登板がクライマックスシリーズの裏の試合というのは寂しい気もする。でも、それもまた岩瀬さんらしいのかも。前人未踏の1002試合目。誰よりもたくさん立ったマウンドを、どんな表情で去るのかに注目したい。(山添 晴治)

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