岡崎真氏 羽生4A成功に“道”見えた 助走コースをリンクの短い方に変更、曲線的な入りが好感触か

[ 2022年2月10日 05:30 ]

フリーに向けての練習を終え、笑顔の羽生(撮影・小海途 良幹)
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 【今日のツボ教えます フィギュアスケート男子フリー・岡崎真】SPのアクシデントで、羽生のフリーは4Aの成否に焦点が絞られたように思える。もちろん4回転ジャンプは10点前後の要素。他の選手の4回転の成否によっては表彰台の可能性がないわけではないが、羽生自身がよりフォーカスできる環境になった印象だ。

 北京入り後の4Aの練習を見ると、全日本までとは助走のコース取りが異なっている。これまでは長方形のリンクの長い方(60メートル)を助走に使っていたが、北京入り後は短い方(30メートル)を使っている。直線的な入りではなく、コーナリングなど、より曲線的な助走の方が入りやすいという感触を得ているのだろうと推察する。

 スピードをつければ推進力が増すが、度が過ぎるとその力に負けてしまう。成功させるためにはどのぐらいのスピードで入ってくるのかが肝で、回転のかけ方も重要になる。速く回ろうとすればするほど、動作の流れも速くしなければいけない。その分タイミングがずれやすくなってしまうので、「タイミング」と「スピード」「高さ」のバランスのどれが一番いいのか、その黄金比を探り、答えにたどり着いたのかもしれない。

 アクセルは得意不得意がはっきりしているジャンプだ。羽生のアクセルの良いところは入ってきた時のスピードと降りた後の流れがほとんど変わらない、そして空中できちんと軸だけでなく芯が一本通っていること。ピーンと張ったような細くて長いきれいな空中姿勢が持ち味で、高さもあって全く無理がない。前向きに踏み切る難しいジャンプなので普通は身構えて跳ぶものだが、羽生は早いタイミングですーっと跳べるなど、GOE(出来栄え評価)での加点要素がとても多い。

 最終グループに入らなかったことも、4Aに集中できる要素となるかもしれない。そして、前人未到のジャンプの成功は、メダル争いを繰り広げる最終組の選手たちにも重圧となって襲いかかる可能性がある。自分のことだけに集中した羽生の“凄み”を、改めて世界が感じることになるかもしれない。(ISUテクニカルスペシャリスト、プロコーチ)

 ▽クワッドアクセル(4回転半) 6種類の4回転の中で唯一、成功者がいないジャンプ。国際スケート連盟が定める基礎点は最高の12.50点で、ルール改正により17~18年シーズンまでの15.00点から下がったが、ルッツの11.50点より1点高い。左足で前向きに踏み切るため、後ろ向きで踏み切る他のジャンプより半回転多い。羽生は昨年12月の全日本選手権のフリーで初めて試合で挑み、両足着氷で成功はならなかった。

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