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羽生の“究極”のプログラム完成が示す フィギュアスケートの本当の姿

[ 2022年2月10日 05:30 ]

練習で入念にチェックする羽生(撮影・小海途 良幹)
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 【藤山健二 五輪愛】SPの冒頭で天文学的確率の不運に見舞われながら、最後まで集中力を切らさずに滑りきった羽生には感動した。4回転サルコーが0点になっても95.15点を積み上げられる技術力と演技力。改めて、フィギュアスケートがただのジャンプ大会ではないことを教えてもらうことができた。

 昨年、ロシアが国際スケート連盟に対し、演技点を構成する5つの要素のうち「音楽の解釈」と「要素のつなぎ」をなくすように提案した。この2つの要素は主に演技の「芸術性」を採点するもので、昨年末の全日本選手権で羽生は「音楽の解釈」で9人中8人のジャッジから10点満点の評価を受けた。

 氷上で選手が演じているのは一つの物語で、そのストーリーに沿ってジャンプやスピンが組み込まれている。ドラマなら必ずクライマックスまでにさまざまな伏線が用意されるが、フィギュアスケートではそれが「つなぎ」に当たる。盛り上げるためには音楽が欠かせないし、ドラマと同じで曲と主人公の演技がマッチしているかどうかは当然、重要な要素の一つとなる。つまりフィギュアスケートは「音楽」と「つなぎ」があって初めて成立する競技であって、2要素がなくなればもはやこの競技は存在意義を失ってしまう。

 フリーで羽生が目指しているのはただ4回転半ジャンプを成功させることではなく、前人未到の大技を組み込んだ究極のプログラムを細部まで完璧に滑りきり、見ている人々に感謝の気持ちを伝えることだろう。それはそのままフィギュアスケートの本当の姿を世界に示すことにもつながる。

 羽生がリンクの上にいるというだけで多くの人が幸せを感じ、明日への活力をもらえる。そんな選手は他にいないし、たぶんこれからも現れないだろう。もはや勝敗は関係ない。余計なことは何も考えず、さあ、新たな伝説となるフリーの演技を堪能しよう。(特別編集委員)

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