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タマゾンに潜む走るナマズ50センチ 強烈竿を曲げる 多摩川

[ 2021年12月19日 06:41 ]

ナマズを釣り上げた中村さん
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】多摩川が「タマゾン川」と呼ばれて久しいですが、その語源は次の通りです。大田区に住んでいた友人がナマズ釣りにはまり、連日多摩川に通って数多くのナマズを釣りました。彼はその釣果に感動し、多摩川はアマゾン川に負けないほどナマズの魚影が濃いといい、称賛の意味を込め「タマゾン川」と呼んだことから始まります。
 それを私が漁協の人に冗談のように面白く伝えたところ、彼がマスコミの取材で「タマゾン川」と漁協組合員自らそう呼んだので反響があり、広がりました。
 実際、多摩川は一年中水が温かいです。羽村をはじめとする取水堰(せき)で水を取られ、その代わりに6カ所の水再生センターから処理水が流れ込みます。この処理水が温かいので平均水温が上がります。多摩川の元々の水は支流の流れ込みも含めわずか20%以下。80%は人間が1回使って処理した温排水の川と言えましょう。
 それゆえ冬でも活発に餌を取り成長するので、コイ、フナ、ニゴイ、バス、ナマズなど魚の成長が早いと考えられます。春には東京湾からマルタが遡上(そじょう)し、卵を産みます。初夏までには天然アユも上ってきます。人間が生態を作り替えた川、巨大魚の巣窟がこのタマゾン川なのです。
 水源まで河口から137キロもありますから多摩川だけに通っても攻めきれないほどポイントは広大です。
 今回は府中エリアに行ってきました。狙いは巨大なニゴイです。オイカワ釣りに行った時に見かけたので、今度はあいつを狙ってみようと思っていました。
 仕事で多忙な釣友の中村なぎささんが、休みだというので昼前に現地到着で開始しました。その日も朝はとても寒く、日が昇って暖かくなってからの釣行です。
 現地に着くと入れ替わりのフライの人が、バスを2匹釣ったと言っていました。
 私のルアーは多摩川では実績のある「ソウルシャッド」です。これを斜め上流にキャストしてリーリング開始すると、潜りながら下流へ移動するので底スレスレを釣るのに都合がいいわけです。
 過去にこのルアーで何匹もニゴイを釣った経験があります。中村さんはちょっと変わった釣り方です。磯竿にスピニングリール、玉ウキ仕掛けを作り、餌の代わりにミミズ型ソフトルアーのフリックシェイクを付けて流します。これは以前ミミズが触れない人に試したら釣れたのでやってもらいました。ハイブリッドなルアーゲームです。
 すぐに私に強烈なヒットがありましたが、ジャンプ一発で外れてしまいました。多分バスだったと思います。
 その後、コイがヒットして足元まで引き寄せましたが、これもバラしてしまいました。魚はいるのになかなかうまくいきません。
 中村さんは本命のニゴイポイントで40センチほどのバスをキャッチしました。そしてその後かなり長い距離を流して掛かった魚は強烈に走り回りました。クロダイ用の磯竿がよく曲がっています。私がラバーネットを差し出し取り込んでみるとその魚はなんとナマズでした。サイズは50センチぐらいでしたがナマズってこんなに走り回るの?と感心したほどでした。
 正直言って、コロナ禍の後、ナマズ狙いで多摩川には来ていませんでしたので、新鮮な気持ちになりました。
 私がすぐにウキ釣り仕掛けに替え、フリックシェイクを付けてキャスティングしたのはいうまでもありません。しかしその後、ヒットはなく、私はノーフィッシュのまま帰路に就きました。以前、1月後半の雪の中で大型ナマズを釣ったこともあり、この冬、久しぶりに真面目にナマズを狙ってみようかという気になりました。(東京海洋大学客員教授)

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