ヤマトイワナと頭脳戦 木々をかき分けた先に希少な存在…長野・木曽川水系

[ 2021年6月13日 06:20 ]

行くだけで癒やされる源流
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 【奥山文弥の釣遊録】長野県木曽川水系の源流へ行ってきました。木曽川水系には大小200以上の支流があります。一生かかっても釣りきれないほどの広さです。日本全国、川の上流にはイワナが棲息していますが、健脚な方なら奥へ入ればまだまだ野生魚はいます。希少価値を認めリリース前提で釣りに行かれることをお勧めします。またコロナ禍で登山客が減り、林道を含む山の中を人間が歩かなくなったこともあり、野生動物が下りてきているとのことです。特に民家がなくなる場所より上流へ行かれる方は要注意です。

 私たちのパーティーは4人。鈴は5つ付けての遡行(そこう)でした。

 フライはオリジナルのブラックモアパラシュート#10です。フライを小さくすると幼魚まで釣れてしまうので要注意です。最近はエルクヘアカディスを使う人が増えて魚に見破られやすいという話も聞きました。

 イワナは川の最上流に住み、どう猛で食べられる餌ならなんでも食べるといわれています。こちらの影さえ気づかなければ、食い損ねたフライを何度でも追いかけます。

 しかし木曽は違います。源流とはいえ、東京、名古屋など大都市圏の中間にあり、入渓する人は多いです。多摩川ほどではありませんが魚が賢くなっています。ですから魚はフライに1回しか食いつかないことがほとんどです。木曽で何回も同じ魚が出てくる川はスレていないという証拠になるほどです。

 今回私たちが求めたのはヤマトイワナというレアな魚です。伊豆半島から紀伊半島の間の太平洋側に注ぐ川の源流、山岳地帯(山梨、長野、岐阜、滋賀、奈良の各県)にしかいないという魚です。ヤマトという呼称が日本人には受けもよく、その希少度合いが珍重されています。

 特徴はイワナの象徴である背中の白い斑点がないことです。イワナにはその白斑点の特徴によって4つの亜種がいます。大きな白点がたくさんある東北のエゾイワナ(アメマス)、小さな斑点があり体側にはだいだい色の点や朱点がある中部~北関東に多いニッコウイワナ、大きな白い斑点が頭部まである山陰地方のゴギ、そしてこのヤマトイワナです。エゾイワナを見慣れていた私にはこのヤマトイワナの無斑点は衝撃的でした。背中がツンツルテンというか、サケ科魚類は必ず黒点か、白点が背中にあるのにそれがないからです。体側のパーマークの模様が浮き立ってイタチザメのような文様になっているものもいて、イワナって不思議な魚だなと思っています。地方変異なので、他のイワナと簡単に交配するので、他亜種の放流があった川(特に人里近く)ではニッコウイワナっぽいヤマトイワナが釣れたりもします。専門用語では遺伝子汚染と呼ばれ批判的な考えを示す人もいますが、イワナに罪はありません。純血が釣れればうれしいですが、そうでなくても自然繁殖した魚なので、野生魚釣りとしては楽しいと思います。

 今回の川ではいそうなポイントにしっかりとフライを投げ込むことができれば、魚は食いついてくれました。ヤマト率は9割を超えたのでみんな満足でした。

 いるところに行けば魚は全部ヤマトなので、希少価値だけでイワナを判断することもそろそろやめようかと思っています。

 しかしこの釣りは体力がなくなったらできませんから、一緒に行く仲間がいてみんなが元気な限り夏は源流へ何度か出かけようと思います。

(東京海洋大学客員教授)

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