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スポニチキャンパス

甲南大弓道部

[ 2019年10月1日 05:30 ]

下山晃弘主将(前列左から4人目)ら甲南大弓道部のメンバー(撮影・坂田 高浩)
Photo By スポニチ

 【己と向き合う究極の武道 心技体 一射入魂】

 今回のキャンパスは甲南大弓道部を紹介する。長さ2メートルを超える和弓で、28メートル先の的(まと)を的中させるには、極限まで高めた集中力と、日々の鍛錬が欠かせない。自己と向き合う究極の武道。袴(はかま)に身を包み、一射に魂をこめる若人の横顔に迫った。

 一本の和弓を手にした時、さっきまでの笑顔は消え、周囲の空気が変わる。足、胴と構えを決め、無にならなければ矢は引かない。心と視線で射抜く28メートル先の的。六甲アイランドの一角にある弓道場には、常に静謐(せいひつ)な風が流れていた。

 「弓道に筋力は必要ありません。“骨で弓を引く”。この感覚が大事なんです」

 下山晃弘主将(4年)の明かした極意は、江戸時代に名人として知られた吉見順正の「射法訓」の第一節にある。週5回の稽古は、ストレッチの後、「射込み」から始まる。自分でテーマを決め、30~40本射る練習は、野球でいえばフリー打撃。感覚をつかんだ後、実戦形式の「立ち練習」に入る。必ず試合と同じく袴を着用。順番を正座で待つ背中は、美しく伸びている。

 「初めて弓を手にした時、“これだ”と思いました。矢が飛んでいくのって、何か面白いですよね。弓道が好きな理由として、変ですかね」

 はにかむ下山は、報徳学園高で競技を始めた。中学時代はバスケット部で活躍。じん帯を負傷して、医師に激しい運動を止められ、クラブ体験会で手に取った「得物」が人生を変えた。入部後、4カ月間はひたすら基本動作の反復練習。構えが固まり、弓を射られるようになっても、全く的に当たらない期間が続いた。「ある日、突然当たるようになったんです。覚醒した、みたいな」。述懐した時期は1年生の冬。残り2年間でインターハイ、国体出場と主力選手として名を上げた。

 さらなるレベルアップのため弓道部の門を叩いた下山と違い、山村雛(4年)は剣道部からの転向組だ。「学生時代にいろんな経験をしてみたかった。剣道が相手との戦いなら、弓道は自分との戦い。弓を引いている時は、誰も助けてくれないので」。山村によると、上達の秘訣(ひけつ)は(1)自分でリミットを決めない(2)自分で考えて答えを出すこと、という。心技体のうち、心が圧倒的なウエートを占める競技。的中(中=あた=り)、不的中(抜け)で一喜一憂する精神的な波をなくすことが現在の課題と分析している。

 「甲南大弓道部の特長は、初心者が多いこと。経験者の人が初心者も育ててくれて、切磋琢磨(せっさたくま)できるので、とてもいい環境だと思います」

 アピールする西村水希(4年)は、高校時代、長刀(なぎなた)部に所属していた。袴姿に憧れ、部を決めてきた現代っ子。弓を握ってまだ3年あまりでも、残してきた実績はめざましい。昨年の関西リーグ戦では、女子で個人的中率第1位。東西のトップランカーだけが顔をそろえる「女子東西学生弓道選抜対校試合」(11月)にも出場。“聖地”伊勢神宮の舞台を踏み、弓引きとして大きな名誉を得た。

 甲南大は団体戦でも、男子が8月の「全日本学生弓道選手権大会」で3位、女子が6月の「全国大学弓道選抜大会」で優勝と好成績が続いている。下山は「リーグ戦で1部に昇格させるのが今季の目標」と言い切り、山村は「全部の試合で勝つ」と力をこめた。

 部員が袴の下に着るTシャツの背中には、「射裡観神」(しゃりかんしん)の文字が躍る。弓道で古くから伝わる「射裡観徳」(弓を通して人間性が見える)を甲南大流に解釈した造語だ。一本の弓は等身大の自分を映す鏡。瀬戸内海の風が吹く弓道場で、きょうも自己鍛錬は続いている。

 ▽弓道 古武道の弓術をベースに、戦後ルールが制定され、全日本弓道連盟が1949年(昭24)に設立された。近的競技(射距離28メートル)と遠的競技(同60メートル)の2種類がある。当たった場所で得点が変わるアーチェリー(洋弓)と違い、的中した数で勝敗を競う。個人戦と団体戦があり、大学のリーグ戦、団体では男子が8人で計160射、女子が4人で計80射する。弓から放たれた矢は最高時速100キロ前後に達することがある。

 ▽甲南大学 学校法人甲南学園の歴史の起点となる甲南中学校を1919年(大8)に開校、大学は51年(昭26)に開学。兵庫県内に3キャンパスがあり8学部で学生数は約9000人。今年4月21日、学園創立100周年を迎えた。六甲アイランド体育施設で多くのクラブが活動しており、弓道部のほか硬式野球部やライフル射撃部などが関西の上位で奮闘している。

 【魅惑の学食 ボリューム満点 とり天うどん】

 大学生協食堂のオリジナルメニューとして長らく親しまれてきた「とり天うどん/そば」(税込み308円)。手作りの鶏天3個をトッピングしたボリューム満点でリーズナブルな食堂のおすすめメニュー。ランチタイムは学生で店内はあふれ、1日約300~380食を売り上げる。今年の暑い夏の期間中には「冷やしとり天うどん/そば」も人気を博した。1年を通じて多くの人に「とり天」が愛されている。一般の利用も可能。

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