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別府大剣道部

[ 2019年10月24日 05:30 ]

高校、大学連携で稽古をする別府大剣道部
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 【高大連携で頂点へ一本 全国唯一!大学生と明豊高校剣士が共通部訓で躍進】

 大分県別府市の「別府大学剣道部」が少しずつ力をつけている。男子部員は27日から千葉県で開催される「全日本学生大会」での躍進を狙う。最大の特徴は、学校法人が同じ明豊高校の剣道部と稽古をする「高大連携」――。熱のこもった稽古を続けている。

 壮観だ。別府大にある剣道場。大学生と明豊高校の剣士が、一緒に大きな声を出しながら稽古をしたり、精神統一の瞑想(めいそう)をする。全国で別府大のみという“高大連携”は引き締まったいい空気をつくり上げていた。

 一般的に高校は脚を使って技の展開力で勝負し、大学は駆け引きが求められる。ともに練習するメリットを別府大の岩本貴光総監督は「大学生にとっては高校生の動きの俊敏さ、技の切れが勉強になる。高校生にとっては大学の落ち着いた剣道をしっかり学べる」と話す。

 岩本監督は13年4月に別府大に赴任した。当時は部員が8人。08年に日田高校(大分)を高校総体優勝に導いたこともある指揮官は、大学のサポートも受けながら、少しずつ強化に励んだ。16年4月には同じ学校法人が運営する明豊高校に剣道部を創部し、ともに稽古するようになった。

 山下優斗(ひろと)主将(4年・久留米商)は「高校生とやることで、負けられない、どんな相手でも、一生懸命やることを学んだ」と効果を話す。稽古中は技の決まり具合を確認したり、積極的にアドバイスを送る。内橋涼(4年・PL学園)は「振りのスピードは高校生の方が速いんです。だから大学生と戦うと、遅く感じる」と話した。結果にも表れており、今年5月の西日本大会の団体戦で、男子が準優勝、女子は3位と躍進。9月の全九州大会で男子は準優勝した。

 高校、大学共通の部訓は「破天荒」だ。豪快、むちゃなことをするというイメージもある言葉だが、本来は中国の故事。「人が成し遂げなかったことをやり遂げる」という意味がある。大学剣道界では関東の学校が強い中で、地方の大分から頂点を狙う強いメッセージが込められている。

 男子は今月下旬に千葉県で全国大会がある。山下主将は「2年前のベスト4を超えたい。みんなで(破天荒を)示すことができたら」と躍進を誓った。

 ≪1メートル65と小柄も 内橋、強気に攻撃≫内橋涼(4年・PL学園)は「岩本総監督の下で学びたい」と大分にやって来た。1メートル65と上背こそないものの、得意とする面打ちを武器に活躍している。「脚さばきを大事にしながら、振り幅を小さく打つことを心掛けている」とポイントを話した。鹿屋体大など九州のライバル相手にも「打ってやろう」と強気で戦ってきたという。

 ≪女子 上村主将、後輩に全国切符の夢託す≫男子に負けじと女子も活躍している。団体戦に出られる人数が集まったのは今年になってからだが、5月の西日本大会で3位の好成績を収めた。上村千愛里主将(4年・島原)は「高校生が頑張っているから、負けられない気持ちで稽古ができている」と刺激を受けている。

 決められた内容を稽古する高校とは違い、大学は自主性が問われる。そのため、方向性が定まっていなかった。「成績を残したいより“めんどくさい”という女子の方が多かった気がします」と振り返る。学年間にも距離感があった。そこで上村は近い学年ごとにやっていた稽古を“解体”。「技術とかより、気持ちを変えないといけないと思ったんです」。学年をバラバラにして、グループをつくった。稽古だけでなく、ときには食事に出掛けて交流を図り、いい雰囲気を醸成。これが結果につながった。

 9月の全九州大会では日経大に敗れ全国大会進出を逃し、シーズンは終わった。「悔しさを感じたと思う。上を目指してほしいです」と後輩に期待した。

 ▽別府大 大分県別府市の私立大学。1908年(明41)に豊後女学校として設立。1954年(昭29)から別府大に改称。文学部、国際経営学部、食物栄養科学部を設置。短期大学部も併設。

 ≪明豊、相乗効果で「稽古充実」≫明豊高校は今年3月に行われた全国選抜大会の男子団体戦で準優勝に輝くなど、大分の剣道界を引っ張る存在だ。

 大学生との稽古効果も大きい。板井俊将(しゅんすけ)副主将(3年)は「大学生は間合いの攻防や構えが崩れなくて。それをどう打つか勉強させてもらっています。一緒に稽古できているのは大きいです」と話した。

 板井は進路を選ぶ際、「稽古が充実すると思った」と迷わず明豊に進んだ。1メートル66と身長は決して高くないが、脚を使って技を多く繰り出そうと、稽古を積む。九州内では九州学院(熊本)などライバルも多い。「負けられない思いと、見て学ぶことも多かったです」と刺激いっぱいの3年間を過ごした。

 ≪剣道ノートで小論文練習≫明豊高校の部員は「剣道ノート」を毎日書き、岩本総監督に提出している。誰と稽古をしたかなど部活動のことだけでなく、学校生活の悩みなどを書いてくる部員もいるそうだ。全てに目を通して返事を書く指揮官は「日常生活をつかむのは大事なこと」と話した。小論文の練習にもなる利点がある。

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