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九産大硬式野球部

[ 2018年9月27日 18:30 ]

グラウンドでアップを行う九産大ナイン(撮影・中村 達也)
Photo By スポニチ

 【強さ生む管理野球 部活動だけじゃない 勉学にも真面目】

 福岡六大学野球の春秋のリーグ戦で39度の優勝を誇る、九州産業大学(九産大)の硬式野球部。05年秋の明治神宮大会大学の部を優勝した強豪は、今春の全日本大学野球選手権でも4強入りし、九州の雄として存在感を示した。その強さを生んでいる「管理野球」に注目した。

 秋も全国へ。しっかりと管理された環境の中、九産大の選手たちはひたむきに汗を流していた。

 現在、部員は約180人。02年から指揮を執る大久保哲也監督(56)と久米健コーチ(37)の実質2人で大所帯を指導している。校内に専用グラウンドはあるが、なかなか全員で練習するのは難しい。そこで大久保監督は部員に授業の時間割を提出させ、(1)9時30分(2)13時(3)14時30分(4)16時30分(5)18時の空いている時間に練習するシステムをつくった。

 「もう13年ぐらいになります。(授業も練習も)遅刻、欠席が格段に減りました。1人でもいたら話にならないですから」

 さらに午前中に練習し、昼から授業を受ける部員には、授業が終わると野球場まで戻って「終わりました」と報告するというルールもつくった。「そのままにしたら授業に行かずに帰る生徒が出てくるでしょ」と大久保監督。こうして勉学にも真面目に取り組む環境を整えている。

 選手にはこの練習スタイルが当たり前になっている。プロ注目のスラッガー、岩城駿也内野手(4年)は「授業がなかったら、いくらでも練習できるので違和感はない。人数が多い割にはしっかりできていると思う」と話す。投手陣のリーダーである福森耀真(3年)は「全体でやると学年で固まって動くと思うけど、毎回メンバーが違うので、先輩、後輩と話せてチームの関わりができる。いいなと思いますよ」とメリットを語る。

 県外出身者が多い野球部の寮も、きちんと管理されている。部員の中から「寮長」「副寮長」を決め、掃除など協力しながら寮生活を送っている。朝は3班に分かれ、時間をずらして散歩、体操をするのが日課だ。「嫌でも起きてちょろっと動くと飯(朝食)を食べたくなる」と大久保監督は狙いを明かす。こうして朝から食事をしっかり取り、パワーをつけている。

 プロ野球、社会人野球だけでなく、各方面で活躍する人材を輩出している九産大の硬式野球部。そこには選手をやる気にさせる「管理」があった。

 【大久保監督と久米コーチの実質2人で約180人の大所帯を指導】

 大久保監督を支えている名参謀、久米コーチは「監督も、私も、もう一度、全国に行って勝負したい思いは強い」と言葉に力を込める。2人はともに社会人野球の三菱重工長崎でプレーした。久米コーチは社会人時代には日本代表にも選ばれ、09年のIBAFワールドカップでは主将も務めた。指揮官からは野手全般の指導を任されている。内野守備の手本として華麗なグラブさばきを見せることもあり、大久保監督が「月とすっぽんですよ」とうなるほどだ。人望も厚く、正捕手の揚村は「選手のことを一番分かってくれる。指導が凄く分かりやすいです」と感謝していた。

【激戦のリーグ戦 神宮大会必ず】

 秋季リーグは佳境を迎えている。前週まで7勝1敗で九共大と並んで首位に立つ。夏に振り込みの量を増やすなど、ハードに取り組んできた。「ピークがピタリと合うようなつもりでやってきた」と大久保監督。29日からはライバル九共大との大一番。連勝すれば2季連続優勝を手中に収める。

 打線を引っ張るのは岩城だ。1年秋から主軸として活躍し、リーグ戦通算安打は100を超える。今夏は児玉とともに、侍ジャパン大学日本代表にも選ばれ、オランダで開催された「第29回ハーレムベースボールウィーク2018」で全勝優勝に貢献した。九共大には同じくプロ注目の最速152キロ右腕、島内がいるが、岩城は「迎え入れるんじゃなくて向かっていきたい」と攻めの姿勢を強調する。

 投手陣は春に7勝を挙げた2年生左腕の岩田将貴が左肘を痛めて離脱中だが、層の厚さを見せている。6月の全日本大学野球選手権の準々決勝、宮崎産業経営大で13三振を奪い完封した浦本千広、福森耀の両3年生右腕、2年生右腕の船越孝志朗の3投手を中心に白星を積み上げてきた。

 リーグ戦で優勝すれば、九州大学野球選手権(10月20日開幕、ヤフオクドームなど)に決勝トーナメントから出場できる。秋の大目標、明治神宮大会に九州地区から出場できるのは1校のみ。優勝を逃せば予選トーナメントからの厳しい日程を乗り越えねばならなくなる。「余計な試合はしたくない」。大久保監督にはリーグ戦優勝しか眼中になかった。

 【2年生サイド右腕 船越が台頭】

 今秋のリーグ戦では、2年生のサイド右腕の船越が台頭してきた。22日の日経大戦では6回1/3無失点と好投。「ストレートが切れよく走っている」と好調ぶりを自己分析する。

 九産大九州高では15年春センバツに背番号18でベンチ入り。当時の背番号1が、現在もチームメートの岩田だ。故障で離脱中の岩田から「頑張れよ」と激励を受け、「そういう思いは強い」と穴を埋める活躍を期している。

 【チーム支えるマネジャー陣】

 働き者のマネジャー陣がチームを支えている。唯一の男子、松浦勢太(せいた)は長崎総合科学大付高の野球部出身。春季リーグ戦からスコアラーとしてベンチ入りして、全国大会の空気を感じ取った。「めちゃくちゃ緊張しました。やるからには日本一をサポートできるマネジャーになりたいです」と意気込む。

 若林真里、横田絢佳は書類作成やアイシングの準備を行い、リーグ戦では場内アナウンスもこなす。若林は15日の福工大戦で初めて自チームの試合のウグイス嬢を任され、「うれしさもあるけど、選手に聞かれる恥ずかしさもありました」と照れ笑い。横田は高校時代にチアリーディング部に所属していた元気さが持ち味で「誰に聞かれても(細かなことまで)しっかり答えられるようにしたい」と明るく話した。

 ▽九州産業大学 1960年(昭35)創立の私立大学。国際文化学部、人間科学部、経済学部、商学部、地域共創学部、理工学部、生命科学部、建築都市工学部、芸術学部がある。現役の野球部OBは浜田智博投手(中日)、高良一輝投手(日本ハム)ら。ほか、主な卒業生に漫画家の北条司、岸本斉史、モデルの蛯原友里らがいる。所在地は、福岡市東区松香台2の3の1。

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