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九共大陸上部

[ 2019年5月23日 05:30 ]

部員252人が切磋琢磨している九共大陸上部
Photo By スポニチ

 【252人の日本新 快挙導くチーム力】

 北九州市にある九州共立大の陸上部は06年に誕生。現在は252人が所属する大所帯になった。特に投てき部門の活躍が目立つ。砲丸投げの日本選手権2連覇中で、円盤投げでも日本新を出した郡菜々佳(4年)ら注目選手も出てきている。舞台裏には個人競技でありながら全員で取り組む練習スタイルがあった。

 3月に大学内であった競技会。郡はメインの円盤投げで59メートル03の日本新記録を叩き出した。練習を重ねてきた投げ方で成果を出して喜びはあったが、満足感はなかった。

 「記録は通過点としか考えていない。世界で考えたらまだまだ下の方やし、もっともっと上を目指していきたいと思っています」

 大阪生まれ。東大阪大敬愛高3年時の高校総体で砲丸投げと円盤投げの2種目で優勝。特に円盤は49メートル15の大会新を樹立するなど当時から有望株。なぜあえて関門海峡を渡り九共大を選んだのか。「競技力だけじゃなくて人としても大切なところを学べると思った。環境もいいので、ここしかないと思った」と振り返る。

 投てきの練習に没頭できるサークルは14個もあり充実している。それ以外にも、九共大陸上部には他大学にない特色がある。練習始めのジョギングやダッシュは、専門種目に関係なく全員でするのが決まりだ。競技力を抜きに、お互いがコミュニケーションを取りながら切磋琢磨(せっさたくま)できる。

 高校時代は一人で考えることが多かった郡。「お互いを応援し合える関係は凄く魅力的で心強い」と話した。

 また、フィールド競技では一般的に、指導者の好みがフォームに表れることが多いが、九共大はバラバラだ。「無形ですよね。その投げ方ではここまでしかいかないよ、とアプローチの仕方を変えたりはします」と疋田晃久監督。型にはまらず、伸び伸びと取り組める環境を求めて、北は北海道から南は沖縄まで全国からアスリートが集まる。

 その上で、個々が目標設定を大事にしている。シーズン前に決め、取り組む。日本記録を出した郡の今の目標は「どの試合でも円盤で55メートルをコンスタントに出すこと」。距離を求めすぎるとフォームにも影響するため、安定感がテーマだ。

 ポイントになりそうなのはチームメートから「ななかスマイル」と評される笑顔。「ダメな試合ほど笑っていなくて硬くなる。楽しんでやっている方が結果も出ている」と分析する。今後は6月7日から神奈川である「日本学生個人選手権」に出場予定。6月末には「サブ(種目)ではある」という砲丸投げで3連覇がかかる博多決戦、「日本選手権」に臨む。

 ◆郡 菜々佳(こおり・ななか)1997年(平9)5月2日生まれ、大阪市出身の22歳。淀川中時代に砲丸投げで12メートル54。九共大1年時は「アジアジュニア陸上競技選手権」に日本代表で出場し、女子砲丸投げで金メダル(15メートル86)、円盤投げで銀メダル(48メートル04)。2年時は「兵庫リレーカーニバル」の円盤投げでシニア競技会初優勝(49メートル23)。1メートル71。

 【佐渡山 仲間の活躍見て燃えた】

 短距離部門も負けていない。佐渡山みなみ(大学院修士1年)は100メートル、200メートルが主戦場。沖縄・宮古高時代はあまり目立つ選手ではなかったが、高3時の国体でリレーに出場したことが転機になった。「凄く感動して。こういう場で戦いたいと思った」。疋田監督や短距離を教える山口恭平コーチに声を掛けてもらったこともあり、九共大進学を決めた。

 すぐに佐渡山の闘志に火が付いた。「最初から活躍している選手もいて。凄いなと同時に悔しい気持ちもあった。練習にのめりこんだ」。悔しさをバネに汗を流し、現在のベストは100メートルが11秒73、200メートルが24秒53。記録も伸びたそうだ。

 疋田監督との会話では「当たり前のレベルを上げろ」という言葉が印象に残っている。どの選手もあいさつや練習は当たり前。その上で「自分がどうなりたいか、どうありたいか。何のためにやるのか。考えながらやる」と解釈している。

 将来の夢は保健体育の先生。その前に「インカレを獲りたい」と意気込む。

 【山下 自らの成長と環境考え進学】

 注目ルーキーが山下航生(1年)だ。市岐阜商3年時に円盤投げで高校日本記録の58メートル38をマーク。1メートル87、115キロとスケールを感じさせる。「投げとかも良くなっている。体作りが出来上がってくれば、いいものが出ると思う」と楽しみな言葉を残してくれた。

 中学時代に砲丸を始め、高校に入ってから円盤を始めた。「こんなに飛ぶんだな」と投てき競技に熱中した。

 進路を決める際、やはり「環境の良さと人間性を高められる」と考えて九共大の門を叩いた。現在は反復練習を繰り返し、筋力トレーニングにも積極的に取り組む。「うまく投げられたときは重さ(砲丸7・2キロ、円盤は2キロ)を全く感じない」という感覚を求めている。目標は「1メートルごとに記録を伸ばすこと」。世界で戦う選手になるべく、故郷を遠く離れた地で奮闘する。

 ≪主務・新原さん、一人で奮闘≫大所帯をまとめるたった1人の主務が新原さや夏さん(4年)だ。高校時代にもマネジャーを経験。主な仕事は各大会に選手が出場するための申し込みや日程管理など。1人でまかなえない場合は、部員にお願いして助けてもらう。「一番の問題は後継者がいないことです」と話していた。

 ≪疋田監督「自分の夢に向かってほしい」≫252人の部員に指導者は3人。主に投てきを担当する疋田監督は、他種目の選手とも積極的にコミュニケーションを取っている。指導スタンスは「やらされる練習を求めず、自分のため、自分の夢に向かってやってほしい」というもの。その上で「頑張ることの価値観をつくらせたい。頑張る価値があるから勝ち負けの喜びがあると思う」と選手に説いている。郡や山下のように早くから頭角を現していた選手は珍しく、多くは高校時代に“一線級”ではない選手。埋もれそうな才能に声を掛け、力を伸ばそうとしている。

 ▽九州共立大 北九州市の私立大学。1947年(昭22)に創設された福原高等学院が前身。1965年(昭40)に経済学の単科大学として開学。主な学部は経済学部、スポーツ学部。大学院はスポーツ学研究科。主なOBは大瀬良大地(広島)、新垣渚、馬原孝浩(ともに元ダイエー、ソフトバンクほか)。

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