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スポニチキャンパス

興国高校普通科アスリートアドバンスコース

[ 2019年12月3日 05:30 ]

興国高校の(左から)硬式テニス部、硬式野球部、サッカー部、陸上部、ボクシング部、ラグビー部の選手たち
Photo By スポニチ

 【目指す文武両道アスリート軍団】

 各大学を紹介してきたキャンパスは、新機軸として高校編をお届けする。栄えある第1号に選ばれたのは、興国高校の「普通科アスリートアドバンス(以下、AA)コース」。草島葉子理事長・校長への取材から、トップアスリートの育成と難関大学進学を両立させる取り組みに迫った。

 熱気に満ちあふれた空間が、近年の躍進を象徴していた。大阪府内2位の生徒数2270人を誇る興国高校。1926年創立の伝統校にあって、ひときわまばゆい光を放つのが2008年に新設されたAAコースの624人(1年224、2年199、3年201)だ。草島葉子理事長・校長が真意を明かす。

 「インテリジェンスがあってこそのスポーツ。運動、勉強ともできる、真のジェントルマンをつくりたい」

 AAコース生はスポーツだけではない、文武両道のアスリート軍団を目指している。日本代表のFW古橋亨梧を輩出したサッカー部は、今秋の全国高校選手権大阪大会で初優勝。ボクシング部は今夏の全国高校総体で8年ぶりに全国を制した。1968年夏の甲子園大会で優勝した硬式野球部や花園出場9回のラグビー部、強化中の硬式テニス部も大阪大会で優勝した。

 「プロ以上の施設をつくるのは、彼らに高校生ではなく、大人として物事をとらえてほしいからです」

 環境が人をつくる、という建学の理念が生徒をアシストする。校内には最新鋭の器具をそろえたアスレチックセンターが配備され、枚方アスリートキャンパスには甲子園球場と同規格の専用グラウンドを所有。トップアスリートとしての視野を広げるべく、海外研修旅行はスペイン・バルセロナでの実技指導や、ハワイではホノルルマラソンにも挑戦する。

 「海外へ出て行くだけが、グローバルではない。学校の中を国際化することが大事だと思っています。勝つために留学生を招いているのではありません。彼らのひたむきな姿から学ぶことは多いし、さまざまな化学反応に期待しています」

 4人の留学生がもたらす相乗効果は大きい。8月の全国高校総体陸上5000メートルで優勝したンガンガ・ワウエル(3年)選手はケニア出身。11月に行われた大阪府高校駅伝でも、チームを2位に引き上げた。

 シンボルマークはインテリジェンス(知性)の青と、パッション(情熱)の赤という2色からなる。志望大学別の学習プランと習熟度別授業を実施。週4回は0限目授業を設け、放課後の部活動に専念できる環境だ。一般入試では関西医科大、一橋大、阪大、早大にも現役合格。東都大学野球で活躍する中大2年の植田健人投手も卒業生で、法学部に在籍する。二つの夢をかなえるためのフィールドが、興国にはある。

 【硬式野球 1975年夏以来の甲子園出場へ 浅利&尤彦晟がけん引】

 甲子園出場のカギを握るのは、間違いなくこの男だ。エース兼主将を務める浅利太門投手(2年)。もちろん、最速140キロ右腕も自覚十分だ。

 「総合力の高い投手になりたい。秋は流れを持ってくることができなかった。攻撃につなげられるような投球をしたい」

 18年の入学以降、公式戦で目立った成績はない。今秋も3回戦で金光大阪に0―2で敗れたが、1メートル85の長身から投げ下ろす角度ある速球にNPBも注目。巨人、日本ハム、オリックスのスカウトが視察している。

 伝統の守り勝つ野球を継承する一方で、台湾からの留学生・尤彦晟(ユウ・イェンチェン)が主軸を務める。U15台湾代表のキャリアを誇る右のスラッガー。長打力もさることながら、右方向への痛烈な低く速いライナーも持ち味の一つだ。「甲子園へ行きたいです」。1975年夏以来となる聖地へ、チームを誘う。

 ≪「ベストな環境」プロテインバー≫2017年6月の新アリーナ完成に伴い、4階アスリートフロアにはプロテインバーが新設された。同校のオリジナルプロテインである「タフボーイ」は、一般的な既製品よりもタンパク質の含有量が多い。作り置きはしないため、ミキサーはフル稼働。AAコース生だけでなく、在校生なら誰もが利用でき、ラグビー部のFL田中陽大選手(AA2年)は「体重も増えましたし、体つきが変わってきました」と声を弾ませる。草島理事長の「ベストな環境を整えたい」という思いは、細部にまで張り巡らされている。

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