市川團十郎 家族で伝えたいもの「華やかさの中に忍耐がある」 ぼたん、新之助と親子3人インタビュー

[ 2023年3月3日 05:30 ]

「伝承の道」に向け意気込む市川團十郎一家(左から)市川新之助、市川團十郎白猿、市川ぼたん(撮影・篠原岳夫)
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 歌舞伎俳優の十三代目市川團十郎白猿(45)、長男の八代目市川新之助(9)、長女で舞踊家の市川ぼたん(11)が出演する舞台「伝承への道」が今月30日の東京国際フォーラム(東京・有楽町)を皮切りに神奈川、大阪で上演される。それぞれが襲名して迎える注目の公演。3人そろってスポニチ本紙のインタビューに応じ、伝統芸能に取り組む家族の姿を語った。市川宗家として伝えたいこととは――。(聞き手・鈴木 美香)

 ――大名跡の襲名から4カ月。團十郎さんがご自身で感じる変化はありますか?
 團十郎「麗禾(れいか=ぼたんの本名)から“どっしりした”と言われます。自覚はないのですが、何かそういうものがあるのかなと思います」
 ぼたん「うまく言えないんですけど、私にはどっしりしたと思えます。父は海老蔵から團十郎を襲名して、團十郎という名前にちゃんと隙間もなくはまったような気がして。舞台も変わりました。普段はお父さんとして、凄く優しいですし、稽古では言うことを言ってくれる頼もしい存在です」
 新之助「僕から見てパパはあんまり変わってないです。お稽古は真面目に教えてくれて、帰ってくると優しく接してくれます」

 ――お子さんはそれぞれの襲名後、どのように変わりましたか?
 團十郎「麗禾は襲名が2019年だったので、目まぐるしく変わっています。ドラマや声優、舞台に踊り…。いろんなお仕事を引き受けさせていただいて、自立できている。自己管理がしっかりできますし、どこに出しても問題なくなってきていて、ちょっと早いかなって思うぐらい、成長が著しい」

 ――襲名から4カ月の新之助さんについては?
 團十郎「まだ時間がたってないので変わってないですね。ただ最近は稽古の時にビデオを自分で撮って、終わった後、それを見て、1人で稽古をやり出したりしている。そういうことは以前はなかった。自主性が高まってきていると思います」

 ――お子さんの頑張りを感じていますか?
 團十郎「頑張っているでしょうけど、それを感じさせない人たち。大変かといえば、まだ余裕があるでしょう」
 ぼたん「私はパパにバレないように、学校に行く前、朝起きてやったりしていました」
 新之助「僕は毎日夜、本読みをする習慣を付けました」

 ――團十郎さんにとってお子さんはどんな存在ですか?
 團十郎「2人がいることで歌舞伎をやっている意味が一つ増えました」

 ――具体的にどのようなことでしょうか?
 團十郎「僕は歌舞伎俳優としてのやるべきことはだいたい全部やった。五輪ですとか、いろんなイベントにも出させていただきました。次はどう変えていくのか、どうリピートしていくのかという作業でいろいろ思うところがあった中で(子供に)渡すって作業と見守るって作業が出てきた。2人にはやるって意思があるので、自分の活力とかになっているのかなと思います。自分ばかりのことを考えている時代は終わったのかな」

 ――今回のテーマは「伝統の継承、未来へ」。これにはどんな背景がありましたか?
 團十郎「今の日本って何かにちゃんと腰を据えて取り組む姿勢の人が減ってきていて、答えをすぐ求める“アンチョコ”的なことが多くなってきている。SNSにしてもそうだし、疑問があればAI(人工知能)が答えちゃうみたいな。Q&Aが非常にたやすい世の中になっている」

 ――そんな中で家族で伝えたいことは?
 團十郎「(ぼたん、新之助のような)こういう年齢から日本の伝統文化に腰を据えて取り組んでいるっていうのは、華やかなことでありながら、忍耐強くないとできない。こういう子供たちが向き合っているところを日本人として忘れないでほしい。私の場合はそういうことを積み重ねた人間であるということを見てほしい。向き合う姿というものが伝統として日本にはある。そういったものを感じていただける時間になればいいなと思っています」

 ▽伝承への道 成田屋親子3人の座談会のほか、ぼたんが軽快な踊りを見せる「子守」、新之助による「鳶奴(とんびやっこ)」、團十郎とぼたんによる「男伊達花廓(おとこだてはなのよしわら)」を上演。30日に東京・有楽町の東京国際フォーラムホールC、31日に横浜市の神奈川県民ホール、4月15、16の両日には大阪市のNHK大阪ホールで開催される。

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