「カムカム」深津絵里 歌の途中で感極まった理由

[ 2022年3月9日 08:15 ]

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第90回で、ひなた(川栄李奈)に「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を歌って聴かせたるい(深津絵里)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】9日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第90回で、女優の深津絵里(49)が演じる2代目ヒロイン・るいが、女優の川栄李奈(27)が演じる3代目ヒロイン・ひなたに向けて「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を歌う場面があった。

 演出の松岡一史氏は「なぜ歌うのか、どのようなスタンスで歌うのか、いろいろと議論を重ねた。ふさぎ込んだ娘に対し、どのような気持ちで向き合うのか、どう寄り添うのか、深津さんと話し合った」と語る。

 「サニー・サイド」はこれまで、初代ヒロイン・安子(上白石萌音)や、安子が生まれ育った岡山の喫茶店店主・定一(世良公則)が歌ったり、るいの夫・錠一郎(オダギリジョー)がトランペットで演奏するなど、ドラマの大切な要素になっている。

 松岡氏は「どんなメロディーで歌うのかというところから議論を始めた。サニー・サイドにはいろんなバージョンがあり、錠一郎がトランペットで吹いたメロディーは、サッチモ(ルイ・アームストロング)が歌ったものとは若干異なる。サッチモは歌の途中に『ベイビー』『ベイブ』と入れるが、女性が歌う場合は通常、『ベイビー』『ベイブ』と入れない。しかし、今回、るいが安子と聴いていたサッチモの歌をそのまま、ひなたに歌ってあげてほしいという思いがあった」と説明する。

 深津は1980年代後半から90年代前半にかけて歌手活動をしていた時期があるが、最近はその歌声を聴く機会がない。

 松岡氏は「ご自身で稽古をして撮影に臨んでいただいた。こちらでは、『サニー・サイド』の英詞の発音をメロディーなしで入れた音源を用意した。そして、安子が子守歌として歌ったものが放送より長い尺であったので、『安子の子守歌を起点にしませんか?』という相談をした。深津さんは、サッチモの歌を聴き、時折、安子の歌を聴いて練習してくださったと思う。お芝居の流れの中で歌うので、歌詞が一言一句、正確な必要はないし、アカペラなので、キーの問題もない。それよりも、娘をどうしたら日向の道に連れ戻せるかという母親としての気持ちが大事だった。私もプレッシャーを感じたし、深津さんも人に向けて歌うことにプレッシャーを感じたと思う」と話す。

 るいはあの場面で、ひなたに、ささやきかけるように歌い始め、自らの思いをかみしめるように歌い続け、途中、感極まった表情を見せる。

 松岡氏は「実は、最初、『もっと明るく歌って下さい』とお願いしていた。しかし、よく考えてみると、歌詞の中に『これまで日陰を歩いてきた』という言葉があり、そこに、るいのこれまでの人生が凝縮されている。るいは、そこを起点に感極まっている」と説明する。

 事故で額に深い傷を負い、母親と離れ離れになった少女時代。つらい日々が続いたが、日向の道を歩き始め、今は親子4人で幸せに暮らしている。そんなるいの半生を、深津は「サニー・サイド」を歌って表現した。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年3月9日のニュース