釈由美子 「壊れていくさまを見てほしい」

[ 2021年6月14日 10:00 ]

映画「ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染」でナオミを演じる釈由美子 (C)2020 THE HORRORS OF HALL PRODUCTIONS INC
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 【牧 元一の孤人焦点】女優の釈由美子(43)が、カナダのホラー映画「ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染」(7月2日公開)に出演し、世界進出を果たした。

 謎の殺人ウイルスの感染がホテルで広がる物語。支配的な夫の恐怖から逃れるために日本から訪れた妊婦・ナオミを釈が演じた。

 釈は「送られてきた台本は英語で、中学生に戻ったような気分で訳して読みました。これを機にハリウッドに進出しようという思いはなかったけれど、武者修行に出てみたいという思いがありました」と振り返る。

 自身のセリフは日本語と英語。03年から07年までNHKの英語トークバラエティー番組「英語でしゃべらナイト」にレギュラー出演した経験があったが、あらためて英会話教室に通い、オンラインで海外の人たちと話す練習もした。

 撮影場所はモントリオールで、マネジャーは同行せず、1人きり。現地に入ってみると、スタッフ同士は英語ではなく、フランス語でやりとりしていた。

 「言葉の壁にぶつかりました。撮影はホテルのワンフロアを借り切って行われていて、役者とスタッフは違う階に宿泊していたので、ずっと缶詰め状態。でも、自分自身が追い詰められたことが、芝居に生きたと思います。日本から飛び出してきた設定のナオミと気分的にリンクして戦えた部分があります」

 ナオミはホテルでウイルスに感染。手が震え始め、やがて、体がしびれ、けいれんし、床にはいつくばる。ホラー感たっぷりで尋常ではない演技を続けた。

 「途中からホラー映画ではなくアクション映画と思うようにしました。満身創痍で、筋肉痛にもなりました。日本にいたら、守りに入ったと思うけれど、カナダにいると、失う物は何もない気がして、捨て身になれました。美しく映らないといけないという思いも捨てました。壊れていくさまを見てほしいです」

 出演の発端は、キャスティングプロデューサーが日本人女優を探していたこと。海外版DVDがある映画「修羅雪姫」(2001年)や、映画「ゴジラ×メカゴジラ」(02年)に釈が主演していたこともあって白羽の矢が立った。

 特に、「ゴジラ」シリーズは世界的に有名。「ゴジラ×メカゴジラ」で釈はメカゴジラを操縦してゴジラと戦う主人公・家城茜を演じ、海外でも広く知られている。

 「家城茜を大事にしています。女優人生の宝物です。実は、今回の作品とは別に、『ゴジラ×メカゴジラ』が大好きだという監督からオファーをいただいて米国の映画に出演しました。米国の新進気鋭の監督から『いつか釈由美子と一緒に仕事をしたいと思っていた』と言ってもらってうれしかった」

 来月公開の映画「ロックダウン・ホテル」は世界進出の第1弾。既に、第2弾となる米国映画の製作が進んでおり、今後、第3弾、第4弾と広がっていく可能性もある。

 「海外進出しようという気負いはないけれど、『この役なら釈由美子』というような、唯一無二の存在になりたいという思いはあります」

 女優デビューから20年を経た今、旬の時を迎えようとしている。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。
  

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