西武ドラ1・隅田 新人初勝利一番乗り 開幕2戦目は球団史上最速

[ 2022年3月27日 05:30 ]

パ・リーグ   西武5―0オリックス ( 2022年3月26日    ベルーナD )

<西・オ>プロ初勝利を挙げた隅田(撮影・尾崎 有希)
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 西武のドラフト1位左腕・隅田知一郎投手(22)が26日、オリックス戦で12球団の新人初勝利一番乗りを果たした。7回1安打無失点で二塁すら踏ませないほぼ完璧な投球。開幕2戦目での新人白星は球団史上最速となった。昨秋ドラフトでは最多の4球団が競合した「七色」の球種を操る左腕。直球も自己最速タイの150キロをマークするなど、能力の高さをプロ初登板で披露した。

 隅田は「弘悦知大葵」と家族の名前を1文字ずつ刺しゅうした、大学時代のグラブを宝物にしている。お立ち台で勝利球の贈り先を聞かれ、家族5人の思いを代弁した。

 「両親にもあげたいけど、ひいじいちゃんが亡くなったので仏壇に飾りたいです。いい報告ができました」

 母方の曽祖父が16日に他界したばかり。牛小屋で遊んでくれ、病室に隅田の写真と色紙を飾った故人にささげる初白星でもあった。

 7つの球種を持つ左腕。この日はツーシームを封印した6球種でも、昨年のパ・リーグ覇者のオリックス打線を翻弄(ほんろう)した。同じ変化球を2球連続投じたのは全98球のうちで、4度だけで、3球連続は一度もなし。「相手は去年のチャンピオン。自分の球を投げて挑んだ」と、全球種がプロで通用することを証明した。

 初回に自己最速タイの150キロを2球計測した直球があるから変化球が生きる。吉田正を初回に押し込んで遊ゴロに抑え、6回は杉本を得意球のチェンジアップで空振り三振。宗の空振り三振も「完璧に自分の勝ちだった。興奮した」と雄叫びも上げた。5三振を奪って7回を1安打だ。

 隅田の父・弘之さん(70)はバスの運転手で朝早く、夜も遅い。母・悦子さん(52)は介護職で産後3カ月で仕事に復帰した。夜勤があるため幼少期から家を空けることが多く、隅田が1歳下の弟・大海さん、4歳下の妹・葵さんの面倒を見ていた。母から最初に教わったのは炊飯器の使い方。「ソースとマヨネーズは必需品」と、おなかがすくとご飯にかけて弟と妹に食べさせた。経済的に余裕はなかったが両親は小2から野球を始めさせてくれた。高校では中学の軟式用グラブを大切に使った。大学で新調した硬式用グラブに全員の名を刻み、プロの道を開いた。

 球団史上最速の開幕2戦目での新人先発白星。同じ左腕で、昨季チームが6戦6敗した天敵・宮城に黒星をつけた。「1年間かけての勝負。油断は禁物。これからデータも入ってくる。始まったばかりなので頑張りたい」。昨季最下位で先発左腕が2勝のみだったチームに、待望の左腕エース候補が加わった。(神田 佑)

 《左腕の勝利数 昨年は内海と浜屋の1勝が最多》ルーキーの隅田(西)が開幕2戦目に初登板初先発で初勝利。今季の新人勝利第1号となった。西武新人の初登板初勝利は19年の松本以来3年ぶり8人目(先発では6人目)。開幕2戦目での白星は60年の近藤光郎も中継ぎでマークしているが、先発では99年松坂大輔(4戦目)、西鉄時代の55年佐川守一(3戦目)らを抜くチーム最速記録だ。なお、西武左腕の2桁勝利は18年の菊池(現ブルージェイズ)14勝、榎田大樹11勝が最後。昨年は内海と浜屋の1勝が最多だったが、今季はどうなるか。 

 ◇隅田 知一郎(すみだ・ちひろ) 1999年(平11)8月20日生まれ、長崎県出身の22歳。1メートル77、76キロ。左投げ左打ち。

 ☆球歴 小2から大村クラブで野球を始め、西大村中では軟式野球部に所属。波佐見では3年夏に甲子園に出場し、初戦で彦根東に逆転サヨナラ負け。西日本工大では1年春にリーグ戦デビュー。

 ☆忘れ物 入寮時に地元の長崎で両親の車に財布を忘れたまま、空路で羽田空港に到着。担当スカウトの岳野竜也育成アマチュア担当に1万円を借りて「借金入寮」した。

 ☆妹思い 契約合意時に大学進学希望だった高3の妹・葵さん(18)の学費を契約金で負担すると宣言。

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2022年3月27日のニュース