恩師が語る“完全男”阪神ドラ3桐敷 自ら考える姿勢がもたらした成長

[ 2021年10月20日 05:30 ]

大矢コーチ(右)と会話する桐敷
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 新潟医療福祉大の150キロ左腕、桐敷拓馬投手(4年)の名前が一躍、全国区となった。11日に行われたプロ野球のドラフト会議では阪神から3位指名を受け、16日の関甲新学生リーグの平成国際大戦では、リーグ史上初の完全試合&19奪三振を達成した。本庄東(埼玉)時代には無名だった左腕が、なぜここまで成長できたのか。4年間を見守った同大の大矢真史投手コーチ(43)に聞いた。

 教え子の快挙をしっかり目に焼き付けた。桐敷が完全試合を達成した16日の平成国際大戦。最後はベンチから見守った大矢コーチは「打たれる気配がしなかった。バランスもいいし、テンポもいいし、変化球も切れていた。凄い投球を見せてくれました」とうれしそうに振り返った。

 試合前から快投の予兆はあったという。「ブルペンで真っすぐがいつもより伸びていた。凄い球を投げていたので、鵜瀬監督と“今日は打たれないだろう”と話していたんです」。試合前の段階でそう思わされたのは、13年のコーチ就任以来初めてだった。

 4年前の夏。練習会に訪れた桐敷を初めて見た時のことは、はっきりと覚えている。「下半身の使い方が上手でした。あまり上体に頼っていなくて、完成はしていないけど伸びしろがありそうだなと」。大矢コーチの指導方針は「教えすぎないこと」。投手陣に対しては、基本的な部分以外の練習メニューを与えることはないという。「医福大では練習しろと言わないので、やらされて野球をしてきた子は最初何もできない」と話す。

 ところが本庄東から入学した桐敷は、当時から自分で考えて練習に取り組んでいたという。「何をやったらいいですか?とは聞いてこなかったですね」。この頃からキャンパス内で夜に黙々とトレーニングしている桐敷の姿はよく目撃されていた。最大の武器は上半身のしなやかさ。「上体の力を抜いて、下半身の力をリリース時に伝える」。そのメカニズムをしっかり体に染み込ませることに注力した。

 これで新潟医療福祉大は13年の創部以来、ソフトバンクから育成13位で指名された佐藤琢磨を含めてNPBに4人輩出した。しかも全員投手。それも高校時代に全国的に有名だった選手はいない。大学入学後に、花開いた選手ばかりだ。大矢コーチは「まず総監督がスカウティングでいい選手を連れてきているのが一番」と佐藤和也総監督(65)の存在を挙げる。その上で「みんな自分でやれるようになって卒業してくれたかな」と在学中に自主性を身に付けたことが、成長の理由と語る。

 やらされるのではなく、自分で考えながら野球に取り組む姿勢を育んでいる。「野球が深く分かってくると楽しいですから。野球の楽しさを分かってくれるといい」。こんな指導方針の下で育った桐敷だから、最終学年の秋に花開かせることができた。(白鳥 健太郎)

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2021年10月20日のニュース