深谷商“頂点を衝け”渋沢栄一に学んだ「士魂商才」、抜け目なし9盗塁10点

[ 2021年7月11日 05:30 ]

全国高校野球選手権埼玉大会1回戦   深谷商10―1富士見 ( 2021年7月10日    大宮公園 )

<富士見・深谷商>8回コールドで富士見(右側)を破った深谷商ナイン(撮影・郡司 修)
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 第103回全国高校野球選手権(8月9日から17日間、甲子園)の地方大会は10日、37大会で計304試合が行われた。埼玉大会では今年のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公、渋沢栄一が支援していた古豪・深谷商が富士見を10―1で下し2回戦進出。50年ぶりの甲子園出場へ好発進した。開幕した神奈川では鎌倉学園が大和に14―0の5回コールド勝ち。11日は41大会で計371試合が行われる。

 正しく立派な心と優れた経営手腕をもて――。渋沢栄一から贈られた書に記された「士魂商才」。その教えは深谷商ナインに、しっかりと根付いていた。

 9盗塁とかき回し10得点でコールド勝ち。「行けると思ったら行けと言われている。ワンバウンドゴーとかそういうところを徹底してやっています」と4盗塁を記録した黒沢倭斗(やまと)主将(3年)は胸を張った。得点のにおいを敏感に感じ取り、抜け目の無い攻撃。藍玉商売で各地を飛び回り、幕末にはパリでも学んで日本に資本主義を持ち込んだ渋沢のように、足を使って、持っている力を生かした。

 「近代日本資本主義の父」渋沢栄一の生涯を描いている大河ドラマ「青天を衝け」。約500の企業に関わり、約600の教育機関や社会貢献事業の支援に尽力したと言われている。その渋沢の出身地である深谷市に大正10年に創立した深谷商も手厚い支援を受けた。講演に訪れ、贈られた「至誠」、「士魂商才」の額。校訓にもなっており、現在も学校に飾られている。

 野球部も71年に春夏の甲子園に出場した古豪。だが2年前には灯が消えかけた。今の3年生が入部するまで部員はわずかに3人。板坂将吾監督は「OBから心配されていた。今の3年生が入ってきてくれて良かった」と語る。現在は18人が伝統を受け継ぐために汗を流す。コロナ下で自粛期間が明け、今大会への調整を兼ねた練習試合は5戦全敗。それでも本番では投打がかみ合って勝利し、指揮官は「本当に久しぶりの勝利」と安どした。

 「渋沢栄一のやってきたものを生かそうと勉強も部活もと学校はやっている。今日こういう形で結果が出たので良かった」と板坂監督。黒沢主将も「深谷が注目されることはうれしい」と言う。目指すは50年ぶりの甲子園。混迷の時代で必死に生きた偉大な先輩のように、未来を切り開く。(小野寺 大)

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