【内田雅也の追球】ピンチの芽を摘む「志」――西の併殺と藤川投入に見た阪神「勝ちきる」姿勢

[ 2019年9月8日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神7―3広島 ( 2019年9月7日    マツダ )

<広・神>勝利投手の西(手前右)とハイタッチをかわす矢野監督(撮影・大森 寛明)
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 阪神監督・矢野燿大が甲子園球場のベンチに掛けてあるホワイトボードに「思」という漢字を書いたことがある。やや旧聞と属するが、7月9日、巨人戦の前だった。あるツイートの動画で知った。テレビ中継で映っていたのだろう。

 矢野は「思」の上の「冂」部分を指で消し「志」という字に変えてみせた。近くにいたコーチたちに何ごとか話しかけていた。

 先日、矢野にこの件を尋ねてみると「こんなこともあるんだって、話をしていただけですよ」と笑っていた。確か「“思い”は“志”に通じている。思うより、より強い志を持ってやろう」と、そんな話だった。

 たとえば「意思」も「意志」も何かをしようという気持ちだが「意志」の方がより前向き、積極的で強い意味となる。

 矢野は「志」を持って監督業に臨んでいる。勝利や優勝を目指すのは当たり前のことだ。それよりも、もっと大きく、自分たちの野球で誰かを喜ばせたい。遠慮なく書けば、幸せにしたいという志である。

 久々のデーゲーム。空調の効いた屋内球場では8月18日巨人戦(東京ドーム)以来、屋外では6月23日西武戦(甲子園)以来だった。蒸し暑いマツダスタジアムで勝ってみせた。クライマックスシリーズ(CS)進出の望みをつないだ。

 矢野の「志」が見えたのは9回裏に藤川球児を送ったことだ。4点リード。セーブはつかない。だが、今はそんな形をうんぬんしている時ではない。たとえば、別の投手を起用し、走者2人を出し、セーブ機会となって藤川を送り込む。そんな悠長なことをしている時ではないのだ。勝ちきることがすべてである。

 このピンチを芽の段階から摘(つ)む、という姿勢は先発で好投した西勇輝にも見えた。特に広島反撃の芽を摘んだ併殺は見事だった。2回裏、長野久義遊ゴロ、5回裏、西川龍馬二ゴロはともにシュートを意識させ、スライダーを引っかけさせた。8回裏は鈴木誠也をシュートで詰まらせた。

 序盤の大量得点で楽だったかと言えば、違うだろう。リードはあっても決して緩まず、アリの一穴も許さなかった姿勢に恐れ入る。実に11長短打を浴びながら、8回を3失点でまとめたのは、さすがである。「志」だ。

 「CSに出たいと思います」ではない。「出ます」と強い「志」で残り試合に挑む。そんな勝利である。=敬称略=(編集委員)

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