有森裕子さん 前田の20キロからのスパートを評価「常識を覆す素晴らしさ」

[ 2019年9月16日 09:15 ]

陸上マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)女子 ( 2019年9月15日    明治神宮外苑発着 )

20キロ付近、鈴木(左)を引き離し先頭を走る前田(代表撮影)
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 【有森裕子の目】スタートから力が拮抗(きっこう)した選手同士の駆け引きは壮絶でした。特に一山の飛び出しは全員に大きな衝撃を与えたはずです。ペースメーカーに慣れた今の選手はこういう経験が少なく世界レベルと言ってもいい早い仕掛けにどう対応するのか、ついて行くのか行かないのか、究極の選択を一瞬にして迫られる状況になりました。

 その中でも高いレベルの緊張感を冷静に自分の中で自分に向けて判断し、最後まで慌てなかったのが前田でした。本人は「仕掛けどころは考えていなかった」と話していましたが、レース展開を考えれば20キロでのあのスパートはなかなかできるものではありません。少なくともそれが今までの日本の女子マラソンだったわけで、常識を覆す素晴らしいスパートでした。

 2位の鈴木は最後の上りを走る時は完全に腿上げ状態になってしまっていました。どんな状況になっても慌てないのは彼女の持ち味ですが、課題もたくさん見つかったレースだったのではないでしょうか。

 今回のMGC方式はとても良かったと思います。単なる一発勝負ではなくまず出場資格を得るために長い期間をかけて指定のレースとタイムをクリアさせ、強化と経験を積ませてきました。だからこそこれだけハイレベルのレースができたのだと私は思っています。(五輪連続メダリスト)

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