前田穂南、独走V! 完全無欠のシンデレラ誕生 五輪では「金メダル」宣言

[ 2019年9月16日 05:30 ]

マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)女子 ( 2019年9月15日    明治神宮外苑発着 )

20キロ付近、鈴木(左)を引き離し先頭を走る前田(代表撮影)
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 女子は前田穂南(23=天満屋)が20キロ付近から独走態勢を築き、2時間25分15秒でぶっちぎりで優勝した。17年夏にMGC出場権を最初につかみ、東京五輪切符も1番でゲット。来年の大舞台は「金メダルを目指したい」と1番宣言をした。2時間29分2秒の2位、鈴木亜由子(27=日本郵政グループ)も代表内定。3位小原怜(29=天満屋)は「3人目の代表」に可能性を残した。

 日陰が多かった競技生活に別れを告げた。前田がぶっちぎりで優勝した。男子から20分遅れてスタート。スローペースのだんご状態という大方の予想を裏切って、一山が序盤にハイペースを仕掛けたが、「誰かが出てくれて逆に良かった」と意に介さなかった。

 10キロで先頭に立つと、松田、福士ら実力者が次々と脱落。20キロ手前で強敵の鈴木を置いて、独り旅になった。ただし、本人に仕掛けた自覚はなかった。

 「いつの間にか後ろの選手がいなくなっていました。誰か来るかと思って準備をしましたけど、来なかった」

 大一番の重圧を感じさせない伸びやかさで10人の戦いを制した。

 新ヒロインは、大阪薫英女学院で3年間補欠だった。全国高校駅伝を一度も走っていない。安田功監督は進路に困った。しかし、本人の一言で、実業団に送り出すことを決めた。「一番厳しいところでやりたいと言ってきたんです」。

 寡黙だが、前田には「長い距離が好き。マラソンがしたかった」という強い信念があった。過去4人の五輪マラソン代表を育てた天満屋の武冨豊監督は、すぐに素質に気付いた。走る才能ではない。努力する才能だ。

 「メニュー以外にも積極的に走る。休みでも他の選手が遊ぶところを、彼女は治療や酵素風呂に行く。競技に打ち込んでいた」
 17年夏の北海道で最初にMGC切符をつかんだ。長い調整期間を生かし3度のマラソンを経験。予定した練習メニューも消化し、名将は「100%に近い」と手応えがあった。

 東京五輪とほぼ同じコースのレースを制した。前田は「金メダルを目指して練習したい」と前を向く。気温30度に迫る条件を考えれば、2時間25分15秒は好記録。まだ23歳。五輪3大会続けて1桁順位がない、女子マラソンの低迷を止める。

 《レース後脱水状態、車いすで控室へ》高気温を予想して、給水に一工夫した。スペシャルドリンクのボトルにタオルを添えた。天満屋の武冨監督は「体に汗が付いたままだと、熱が体にこもる」と暑さ対策の狙いを明かした。レース後の前田は「脱水状態と足がつりそうでした」と疲労の色が濃く、車いすに乗って控室へ向かった。

 【前田穂南(まえだ・ほなみ)】
 ☆生年月日とサイズ☆ 1996年(平8)7月17日生まれ、兵庫県尼崎市出身の23歳。1メートル66、46キロ
 ☆経歴 小学校ではバスケットにも取り組む。園田東中から、陸上の強豪、大阪薫英女学院へ。卒業後に実業団の名門、天満屋へ進む。社会人5年目
 ☆マラソン歴 17年1月の大阪国際でデビュー。2時間32分19秒で12位だった。自己ベストは18年大阪国際の2時間23分48秒
 ☆好きな言葉 「全知全能」。思い通りのレースができればという思いが込められている

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