【コラム】西部謙司

変化しているアジア予選

[ 2016年9月15日 05:30 ]

 UAEに敗れ、タイに勝って1勝1敗。ワールドカップ最終予選はなかなか厳しいものになりそうだ。

 得点するのが難しくなっている。日本の場合はフィニッシュの効率があまりにも悪いという問題もあるのだが、全体的に守備が強化されているようだ。試合がロースコア化すると、1つの判定やちょっとした運が勝敗を分けるケースも出てくる。今夏のユーロもそうだった。ボールを支配して攻め込んでいる側に有利な結果が出にくい。アイスランド、ウェールズの躍進、ポルトガルの優勝は、何が起きてもおかしくない状態だったユーロの象徴といえる。

 固く守ってカウンターを狙っているほうが有利とまではいえないものの、ポゼッション側の優位性は減少している。この状況でカギになるのは、いかに守りを崩すかよりも、いかに相手のカウンターアタックを阻止するかだ。例えば、昨季のCL決勝でレアル・マドリードはアトレティコ・マドリードにわざとボールを持たせた。ユーロではドイツがイタリアの数少ない攻め手を完全に封じようとした。得意な武器を使って相手を打ち負かすのではなく、こちらの武器も制限されるかわりに相手の武器も使えなくする、互いにマイナスになるが攻撃力に優れているほうにわずかだが優位性が残る。そういう戦い方だった。堅守速攻を狙う相手に対して、堅守を打ち破るのではなく速攻を無効化するわけだ。

 UAE戦の日本は堅守を打ち破ろうとした。大島僚太の起用はその表れだった。しかし、それに失敗してタイ戦では山口螢を使って、まず相手にカウンターをさせないようにした。決定力不足はUAE戦と同じだったが、相手にはほとんどチャンスを作らせていない。

 UAEとタイでは実力に差があるとはいえ、タイ戦の慎重さが今回の予選には必要になりそうだ。少しぐらい相手の守備が固くなっても、それをこじ開けて得点するぐらいの力をみせてほしいところだが、もうUAE戦の失敗は繰り返せない。内容としてはつまらない試合が多くなるだろうが、現在の日本には僅差勝負を丁寧にものにしていく慎重さが求められている。(西部謙司=スポーツライター)

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