【コラム】西部謙司

チームが変化するとき

[ 2020年7月9日 11:30 ]

 勝っているチームは変えるな――昔からサッカーの鉄則として語られている。確かにそういうところはあるのだろう。ただ、そうであるなら、チームは負けてからでないと変われないということだ。

 バルセロナのキケ・セティエン監督の来季が危なくなってきた。選手との軋轢(あつれき)、とくにリオネル・メッシから見限られているという報道も出てきて、いよいよもうダメなのかというタイミングで新布陣を出してきた。

 第33節のアトレティコ・マドリー戦で4-3-1-2を採用。このシステムの肝になるトップ下に20歳のリキ・プッチを抜擢した。小柄で華奢なプッチだが、カンテラ出身らしい技巧と初速の速さを発揮して可能性を感じさせた。すると次の第34節ビジャレアル戦では、この新しいポジションであるトップ下にメッシを起用。アントワーヌ・グリーズマンとルイス・スアレスの2トップとした。これがずばりと当たり、好調ビジャレアルに4-1と快勝している。今季、鳴り物入りでアトレティコから加入しながら不振にあえいでいたグリーズマンが蘇っていた。

 メッシはゴールゲッターからアシストにプレーの比重を移しつつあるので、トップ下は新しいメッシを生かすにも良いアイデアだろう。サイドでのプレーに精彩を欠いていたグリーズマンは中央で見違えるような活躍。プッチをトップ下に起用し、メッシをFWに置いて、バイタルエリアを2人で攻略する形もみえてきた。

 もっと早くできなかったものかとも思うが、ピンチになったからこそ出てきたアイデアなのかもしれない。

 ところで、日本代表は森保一監督になってからずっと変わらない印象がある。

 クラブチームと試合間隔がやたら空く代表チームでは単純に比較できないのだが、日本代表がそれだけ深刻な危機に陥っていなかったからだろう。小さな不具合はある。森保監督も少しは手を入れてもいる。ただ、大きなピンチもないので変化もない。

 これは現在の日本代表に限ったことではなく、格下相手のアジア予選や親善試合でさえ、あまり大きな実験や冒険はしてこなかった。ベース固めと新しい選手の見極めが精一杯で、戦術を大きく変えるほどの余裕がないのだ。

 ただ、ワールドカップ1年前ぐらいになると、だいたい何らかの壁につき当たる。それまで表面化していなかった問題が出てくるのがちょうどこのあたりなのかもしれない。上手く乗り切れたケースもそうでない場合もあったが、そもそも3年間ほど「無風」という環境に問題がある。むやみにプレッシャーをかければいいというものではないが、日本代表にはもう少し刺激があったほうがいいのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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