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【コラム】西部謙司

サイドバックのボランチ化とウイング化

[ 2018年2月28日 22:00 ]

開幕戦C大阪戦後、ピッチを後にする横浜のDF松原(左)とDF中沢(右)
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 J1第1節、セレッソ大阪とのアウェイを1−1で引き分けた横浜Fマリノスは、いわゆる「偽サイドバック」の戦術を使っていた。

 金井貢史、松原健の両サイドバックが後方の組み立て時に中央へ入ってくる。後方のビルドアップに対する守備側の人数は2トップ+2サイドハーフの計4人、対するビルドアップ側の横浜はセンターバック2人、アンカー(喜田拓也)、そしてボランチ化したサイドバック2人の5人(GKまで含めれば6人)。横浜は5人が近い距離で連係できるので、1人足りないC大阪が追い回したところでロンド状態になって奪うのは難しかった。

 この偽サイドバックは、横浜の株主であるシティ・グループの総本山、マンチェスター・シティで行われている戦術である。多少危なっかしいところもあったが、横浜はグアルディオラ監督率いるシティの戦術を上手く採り入れていたと思う。

 このやり方はウイングにボールが入りやすく、ウイングに1対1の優位性があると威力が出てくる。横浜はまだそこに改善の余地がありそうだった。

 一方、サイドバックがタッチライン際に上がってウイング化する戦法も広く用いられている。この場合はウイングが外に開くのではなく、中へ入ってインサイドハーフとしてプレーする。名古屋グランパスのガブリエル・シャビエルなどはこのタイプだ。ウイングが中へ移動するので空いた外のエリアにサイドバックが進出することになる。

 サイドバックがボランチ化するかウイング化するかは、サイドバックの資質にもよるが、より影響があるのはウイングが外に張るタイプなのか、中へ入るタイプなのかだ。サイドバックがボランチ化してもウイングが中へ入ってしまうなら、外に人がいなくなって幅がなくなる。サイドバックがタッチライン際を上がっても、そのスペースが味方のウイングに埋められていれば効果は薄い。チームとしてどう戦うかの整合性をとらなければならない。

 ところで、日本代表の場合はウイングを外に張らせている。中へ入るタイプは本田圭佑ぐらいなので、サイドバックの使い方としてはボランチ化のほうが相性はいいはずだが、今のところウイング化はしていてもボランチ化はしていない。ハリルホジッチ監督はあまりポジションを動かすタイプではなさそうだが、このあたりをワールドカップまでにどうしていくかは注目してみてもいいかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

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