【コラム】西部謙司

アジア予選とジャパンズ・ウェイ

[ 2019年9月13日 15:00 ]

日本代表・森保監督(撮影・篠原岳夫)
Photo By スポニチ

 2022年カタールワールドカップのアジア2次予選が始まった。日本はミャンマーとの初戦を2-0で勝利している。

 前回予選の初戦(対シンガポール)がホームで0-0だったのに比べれば、順調なスタートだ。前回のショッキングなシンガポール戦は、当時のヴァイッド・ハリルホジッチ監督のその後の采配に影響も与えたと思う。3次予選の初戦でUAEに敗れると、プレースタイルの変更に踏み切った。

 ボールを支配して攻め込んでもシンガポールに1点もとれなかった。力の差があっても、分厚く守られると点がとれないという展開はサッカーでよくあるのだが、おそらく日本的なスタイルへの疑念はこのときに生じていたはずだ。それが伏線になっていて、UAEに負けて決断したのではないかと思う。

 それ以降は、もっとダイレクトな縦へ速い攻撃を指向するようになった。それは予選突破後も続くが、ロシアワールドカップ直前にハリルホジッチ監督は解任され、西野朗新監督の下、前監督が信用していなかった日本的なスタイルでグループリーグを突破した。JFAの田嶋会長は「ジャパンズ・ウェイ」と、日本の戦いぶりを評価している。

 現在の森保一監督はジャパンズ・ウェイを引き継いでいる。選手たちが現在持っている力を自然に発揮できるプレースタイルだ。2次予選はこれで何の問題もないだろう。初戦でシンガポールと引き分けた前回も、終わってみれば7勝1分けで余裕の1位通過だった。アウェイはアジア独特の難しさはあるが、それで2次予選を通過できないほど日本と他国の実力は接近していない。

 だが、3次予選あるいは本大会となるとそうはいかない。ミャンマー戦の後半は無得点だった。この45分間だけ見れば、シンガポールと引き分けた試合とほぼ同じである。選手個々の力を発揮しやすい無理のないスタイルは、裏を返せば個の組み合わせにすぎず、それ以上の威力はなかった。現在の日本は個の力があるので、3次予選もこれで何とかなるかもしれないが、ワールドカップでは良くてベスト16で止まるのではないか。なぜなら、前回大会と基本的に何も変わらないからだ。選手の質、運、経験(試合運びの上手さ)で、多少の上乗せがあったとしても、前回のベルギークラスの相手に勝ちきれる保証にはならない。

 本気でベスト8を目指すなら、プレーのクオリティを1段階上げなければならない。森保監督は持っている力を引き出せているが、それ以上のプラスにはなっていない。ハリルホジッチ監督は部分的にチームを壊し、選手にとってやりやすくなくても、クオリティを高めるチャレンジはしていた。上手くはいかなかったが、ジャパンズ・ウェイという温い現状維持には満足していなかった。視線の先にワールドカップを置くなら、森保監督もどこかのタイミングで現状打破の手を打つときが来るのかもしれない。(西部謙司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る