【コラム】西部謙司

バイエルン優勝が示唆すること

[ 2020年8月27日 00:00 ]

7季ぶり6度目の欧州制覇を果たしたバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
Photo By AP

 2019-20シーズンのCLはバイエルン・ミュンヘンが全勝で優勝した。バイエルンのプレーぶりは、戦術的な変化が進んでいることを示していた。

 特徴的なのは、攻撃でフィールドの中央部を使わないことだ。

 センターサークルからペナルティーエリアへかけての中央部分は迂回する。ここへはパスを入れない。ELを制したセビージャも同じだった。CLベスト8に躍進したアタランタも同様。いずれもかなり徹底したサイド攻撃なのだ。

 かつては中央エリアのDFとMFの間、MFとMFの間など、ゾーンディフェンスの隙間へのパスは攻略の決め手だった。ところが、その重要だった攻め手を、バイエルンを筆頭とするいくつかのチームは放棄していた。

 それだけ中央エリアはボールを「奪われやすい」地域になっていて、そこで奪われると即時に相手のカウンターアタックにさらされる。わざわざ地雷を踏みに行くようなものだと考えているのだろう。攻撃で回避するエリアは、同じ理由で守備の重点エリアになる。サイド攻撃が不発でも、そのままサイドに蓋をして中央へ誘導し、素早いマークとプレスバックで前後から挟み撃ちにする。

 中央エリアでのパスレシーブは、ボールと相手を同一視野に収められないケースが多く、受け方が難しい。だからこそ、そこは技術の見せどころでもあったわけだが、メッシやネイマールでもないかぎり、そこで受けるリスクは無視できなくなっている。一瞬で2人を相手にしなければならず、そこを確実に打開していける選手は限られている。バイエルンにはコウチーニョやチアゴ・アルカンタラがいるが、コウチーニョはウイングで起用され、チアゴはビルドアップの軸として後方に構えていて、ほとんど前には出ていかなかった。

 技術か体力かでいえば、今は体力の時代である。ただ、これまで同様に技術が巻き返す時期はいずれ来る。

 Jリーグはクオリティを上げてきているが、まだ技術のサッカーが優位を占めている。中央エリアを回避するようなチームも出てきていない。そこまで技術が体力に抑え込まれる状況ではないからだ。怖くて中央へ入れられないほどの状況は、まだヨーロッパの頂点だけで起きている現象だが、いずれは世界的にそうなっていくと思う。それに遅れをとらないような体力の増進が必要だ。一方で次の流れを読めば、メッシやネイマール級の技術がカギになるのも明白である。ただ流行に追随するのではなく、先を読んだ育成が重要だ。現状は、世界のトップで戦える体力が不足していて、そこで優位性を持てるほどの技術もない。体力は必要で、技術はさらに必要になる。(西部謙司=スポーツライター)

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