【コラム】西部謙司

短所で戦ってしまった日本

[ 2016年10月8日 05:30 ]

W杯アジア最終予選 ( 2016年10月6日    埼玉 )

田嶋会長と握手するハリルホジッチ監督
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 劇的な勝利を収めたイラク戦だが、試合内容は近年記憶にないぐらいの低調さだった。

 ハリルホジッチ監督の言う「デュエル」ではよく戦っていたし、吉田麻也を前線に上げての空中戦には迫力があった。清武弘嗣を経由してのカウンター、原口元気の個人技もあった。しかし、日本の長所だったはずの連係やパスワークはほとんど見られず、守備組織も穴だらけだった。

 イラクと同じように一発狙いの攻撃になっていて、蹴り合いとセカンドボールの奪い合い。ハリルホジッチ監督が強調してきた「デュエル」「縦に速い攻撃」は、確かに日本が身につけなければならないものだが、それ自体は短所であって武器ではない。イラク戦は、わざわざ不得手な戦い方をしていた。

 ハリルホジッチ監督は、いまだに上手く日本選手をコントロールできていないのではないかと心配になる。

 ハリルホジッチは監督としてのキャリアを主にフランスで積んでいる。フランスの監督は概して非常に厳しい。戦術面でも、しつこいぐらいに強調しないと個人主義者たちを統制できない。10をやらせるには、15か20ぐらい言わないとダメなのだ。言い過ぎぐらいでバランスがとれる。

 ところが日本の選手は監督に忠実なので、強調されるとそればかりになってしまう傾向がある。それは長所にもなるのだが、監督が圧をかけすぎると自分のプレーを見失ってしまう。「自分たちのサッカー」に固執するのも困るが、自分たちを見失ったサッカーでは真価を発揮できるはずがない。

 士気を高揚させる勝ち方だった。良いプレーではないが良い勝ち方だ。内容はあれ以上、悪くはなりようがないので、オーストラリア戦に期待したい。(西部謙司=スポーツライター)

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