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【コラム】西部謙司

ベテランの引き際

[ 2019年1月15日 21:00 ]

引退した川口能活(右)と楢崎正剛
Photo By スポニチ

 クラブのレジェンドたちが次々に引退している。川口能活はシーズン中に引退発表していたが、日本代表で川口のライバルだった楢崎正剛も続くことになった。小笠原満男、中澤祐二もユニフォームを脱ぐ。

 選手寿命が長くなっているとはいえ、40歳近くまで、あるいはそれを超えてまで第一線でプレーを続けるのは並大抵のことではない。それだけ長いキャリアであればケガとの戦いもあるだろうし、スタミナやスピードは落ちてくる。経験に裏打ちされた「巧さ」だけではカバーできなくなるときが必ずくる。また、そうでなければJリーグの価値もない。

 38歳の中村憲剛がいまだにキャリアピークともいえる活躍を続けているのは驚きだが、川崎フロンターレでプレーしていなければ、あれほどの活躍はできていないと思う。中村自身の力量もさることながら、周囲が中村の長所を発揮させ短所を補うべく助けているから成立している。

 フィールドに年齢は関係がない。周囲に「やらせてもらえているのか」、それとも掛け値なしに「やれているのか」。「やらせてもらえる」恵まれた環境があるかないかでも、いつまでプレーができるかは違ってくる。通常、ベテランに楽をさせられるほど余裕のあるチームはないので、そのときはブーツを脱ぐしかない。それを自覚し、引き際を与えてもらえる選手はほんの一握りであり、やはり名選手なのだ。(西部謙司=スポーツライター)

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