【コラム】西部謙司

南野のリバプールへの移籍

[ 2020年1月2日 09:00 ]

ザルツブルク(オーストリア)からリバプール(イングランド)に移籍した日本代表FW南野
Photo By AP

 南野拓実がリバプールへ移籍した。リバプールはCLのディフェンディングチャンピオンであり、プレミアリーグのトップを走る、現在世界最強のクラブといえる。

 ビッグクラブへの日本人選手の移籍は、過去にも香川真司のマンチェスター・ユナイテッド、本田圭佑のACミランがあった。現在も久保建英がレアル・マドリー、安部裕葵がバルセロナに所属、マンチェスター・シティには板倉滉、食野亮太郎が移籍しているが、いずれも他クラブへ貸し出されるなどトップチームではプレーできていない。ビッグクラブに移籍することはできても、そこで活躍するのはさらに高いハードルがあるわけだ。

 南野の場合もリバプールで試合に出られるかどうかはわからない。マネ、サラー、フィルミーノのアタックラインが強力なので彼らのバックアップとして、あるいはFW以外のポジションでプレーすることになると思う。ただ、クラブとの相性はいい。

 南野がプレーしていたオーストリアのザルツブルクからは、サディオ・マネがリバプールに移籍している。ナビ・ケイタもドイツのライプツィヒでワンクッション置いてリバプールへ来た。ザルツブルクからリバプールというルートがあるのだ。

 ザルツブルクとライプツィヒは飲料メーカーのレッドブルがメインスポンサーになっている。兄弟クラブともいえる関係で、プレースタイルの設計はいずれもラルフ・ラングニックというドイツで有名な指導者が担当した。ラングニックの志向するプレースタイルはリバプールと親和性が高く、スピードとアグレッシブなプレーが特徴だ。

 以前、イングランドの関係者に選手を獲得するときの基準について聞いたとき、その人は「足が強いこと」と答えていた。少し抽象的な言い方にも聞こえるが、難しい話ではなく足腰の強さを重視しているということだった。技術が多少粗くても上達する、戦術は学べる。しかし足腰の強さは天性のものが大きいからという説明だった。

 南野は足が強い。特別に速いわけではないが、ターンやストップ、ストップからの一歩が速く、体の軸もぶれない。例えば、右足を前に出した状態から、そのままもう一歩右足を踏み出せる強さを持っている。リバプールの選手はいずれも足が強い選手だ。日本人ではかつての中田英寿がこのタイプだった。

 キックの上手さは長所だろう。キックの正確さは結果につながる。いくらドリブルが上手くても、それだけでは得点にもアシストにもならない。プロの世界で目に見える結果を残すにはキック力が絶対に必要である。南野はとくに強いシュートがあるわけでも多彩なキックをするわけでもないが、ボールの中心をとらえるのは上手い。シュートでもパスでも、ここというときに確実に仕留める力がある。

 リバプールでレギュラーポジションを獲ることができれば、世界トップクラスの選手として認められるということだ。(西部謙司=スポーツライター)

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