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【コラム】西部謙司

アンデルレヒトの新10番森岡亮太

[ 2018年2月8日 06:00 ]

 アンデルレヒトはベルギーの名門クラブである。1983年にはUEFAカップに優勝しているし、カップウィナーズカップは1970年代に2回獲っている。ベルギーナンバーワンの人気クラブであり、ブリッセル以外にも多くのファンを持っている。多くのスタープレーヤーが在籍していて、モアテン・オルセン、ポール・ヴァン・ヒムスト、エンツォ・シーフォ、ロブ・レンセンブリンク、ヴァンソン・コンパニ、ロメル・ルカクなどがプレーした。

 森岡亮太は10番を背負ってのアンデルレヒトでのデビュー戦で1アシストを記録。左斜めに走ってロングボールに追いつき、正確な左足のクロスボールをシルヴェル・ギャンブラに合わせた。後半は自ら獲得したPKを蹴って左へ外し、勝ち越しのチャンスを逃してしまったが、まずまずのデビュー戦だったのではないだろうか。

 森岡は典型的な「10番」のタイプである。日本からヨーロッパへ移籍する選手の多くが10番タイプだった。中田英寿、名波浩、中村俊輔、小野伸二、小笠原満男、藤田俊哉、本田圭祐、香川真司、清武弘嗣・・しかし、そのままのプレースタイルを貫いた選手はほとんどいない。ポジションを下げたりサイドへ回されたりと、元のままではプレーできなかった。トップ下というポジションそのものがないクラブも多く、森岡もアンデルレヒトでは2シャドーの位置に置かれている。

 もう1つの大きな理由は得点力だろう。ヨーロッパでこのポジションに期待されているのはゴールなのだが、日本の10番はプレーメーカーのタイプが多くてパスは上手いが期待ほど得点がとれなかった。

 アンデルレヒトが森岡を獲得したのも、ワースランド・ベフェレンでコンスタントに得点できていたからだと思う。たくさん得点をとるにはゴール前へ行かなければ難しい。ゴールエリアの幅のペナルティーエリア内、最も多くの得点が入る場所に踏み込んでいけるかどうかだ。森岡の場合、わりと自然にこの場所へ入っていく。屈強なセンターバックが待ち受けているエリアへ、とくに体が大きいわけでもない森岡が平気で侵入してヘディングシュートを打ったりしている。

 あまりつぶしが利きそうにない森岡だが、躊躇なくゴール前へ入っていける資質を生かして、そのまま10番としてさらなる成功をつかんでほしい。(西部謙司=スポーツライター)

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