×

【コラム】西部謙司

鎌田、久保の成長が与えた影響

[ 2022年10月5日 21:30 ]

<サッカー日本代表欧州遠征>笑顔で練習する(左から)上田、久保、鎌田(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 日本代表の欧州遠征の成果は2-0で勝利した米国戦で戦い方のベースを確認できたことだ。これまでの日本代表は守備に関してはある程度計算が立つが、得点については三笘薫と伊東純也のドリブル突破以外にこれといった攻め手がみえなかった。しかし、米国戦では高い位置で奪ってのカウンターアタックで得点するという、いちおうの回答が得られた。

 その背景にあったのが鎌田大地と久保建英の成長だと思う。

 欧州遠征2試合で採用した4-2-3-1は日本にとって手慣れたシステムではあるが、4-3-3からの変更は鎌田の存在が大きかったのではないかと思われる。カタールワールドカップのグループリーグで対戦するドイツ代表、スペイン代表との相性もあるとはいえ、フランクフルトでの鎌田の活躍があっての変更だろう。今季の鎌田は3-4-2-1のボランチとしてプレーする機会が多く、そこで安定した守備力をみせている。もともと球際の強さはあったが、それを実証した形である。

 久保はレアル・ソシエダへの移籍で水を得た魚のように活躍している。丁寧にパスをつないでいくチーム戦術にフィットし、プレーに連続性が出てきた。これまでプレーしてきたマジョルカなどでは断片的にしか発揮されていなかった、受けて捌いてまた受けるといった連続的なプレーができている。さらに守備への切り替えや寄せの速さといった守備面での成長もみせている。

 最もクリエイティブな鎌田と久保の競演が実現したのは、2人の守備力が信頼を得たということだろう。どちらもタイプとしてはトップ下だが、米国戦では鎌田がトップ下に入り久保は左サイドに配置されていた。サイドハーフは守備の鋭さや運動量が求められる。とくにドイツやスペインとの対戦では守備力が欠かせない。昨季までの久保はその点がいまひとつだったが、守備の不安がなくなってサイドを任せられるようになったのは大きい。いざとなれば鎌田とポジションを交換することもできるし、米国戦では久保以外のフィールドプレーヤー全員に球際の強度があるタイプだったので、巧さと速さで際立つ久保を起用する余地もあったわけだ。

 高い位置でボールを奪えれば、相手の守備は自然に崩れているので崩す手間は省ける。そのときに鎌田、久保の即興が生きる。代表チーム自体の活動期間は限られていて継続性も望めないので、所属クラブでの成長をいかに取り込むかがポイントになるが、その意味でも欧州遠征は収穫を得られた。(西部謙司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る