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【コラム】西部謙司

勝負どころの連戦

[ 2022年1月20日 13:00 ]

 まもなく中国、サウジアラビアをホームに迎えてのワールドカップ予選が行われる。ここで連勝すればカタール大会へ一気に近づく。

 しかし、吉田麻也、三笘薫、古橋亨梧が負傷で起用できそうもない。守備の重鎮と攻撃の切り札が欠場する可能性が大きいと報道されている。

 前回のオマーン戦では途中投入された三笘と古橋が試合の流れを変えた。柴崎岳、南野拓実、長友佑都に代わって三笘、古橋、中山雄太が登場しての勝利は、この試合だけでなくチームの膠着を打開するものだった。

 3人が欠場なら影響は大きい。ただ、これも新たな変化のきっかけになれば災い転じて福となるかもしれない。

 キャプテンで守備のリーダーでもある吉田はディフェンスラインを統率する不可欠なCBである。冨安健洋とのコンビは日本代表の鉄板といっていい。ただ、吉田は速いDFではない。ゴール前でクロスボールを跳ね返す能力、ビルドアップの安定感はあるものの、スピードはあまりにない。そこは冨安がカバーできるわけだが、吉田を基準にしているかぎりラインコントロールはどうしても鈍くなる。

 CBがどれだけ前向きにプレーできるかは守備の強度を左右する。前向きにプレーするにはラインを下げずに相手FWをコントロールしなければならない。その上げ下げの基準が吉田のままでいいのかという疑問があった。今回は冨安がラインコントロールの基準になるだろう。冨安と組むのが板倉滉なのか、それとも谷口彰悟、中谷進之介かはわからないが、以前より強気のライン設定になる可能性がある。

 古橋の代わりは前田大然が有力だと思う。セルティックで古橋が負傷欠場していた試合で、前田はデビュー戦初ゴールを決めている。日本代表でも同じように古橋の穴を埋めてくれる期待はある。古橋と前田ではタイプは違うが、どちらも速さが武器だ。相手のCBに直接的な脅威を与えられる。速いCFを警戒すれば相手のCBは下がる。下がりながらの守備はあちこちにスペースができる。前田は相手GKへのプレスが速く、ビルドアップの余裕を奪うという効果もある。

 個人技で流れを変える三笘に代わる選手としては中島翔哉の復活に注目したい。ドリブルで切り裂いて決定機を作ることにかけては、もともと右に出る者がいなかった。しばらく日本代表から遠ざかっていたが、復調しているならスーパーサブとしての威力は三笘以上だろう。

 Jリーグがオフのこの時期の試合はコンディションが上がらず、鬼門になることが多かったが、ヨーロッパ組が増えているのでむしろコンディションの問題はないはずだ。コロナ禍の特殊な状況、移動負担の不安はあるが、勝負どころの連戦で真価をみせてほしい。(西部謙司=スポーツライター)

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