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【コラム】西部謙司

放送権料とリーグ戦

[ 2017年3月4日 06:00 ]

1月20日記者会見で握手するJリーグの村井満チェアマン(左)と動画配信サービス「DAZN」のジェームズ・ラシュトン
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 2017年のJリーグはこれまでと違う。今年から多額の放送権料の分配が始まるからだ。J1の優勝賞金は単純に3倍になっているうえ、3年間の分割払いも含めると22億円を手にすることができる。クラブの強化にとって決定的な資金になりうる。

 イングランドでプレミアリーグがスタートしたのは1992年だった。最初に優勝したのはマンチェスター・ユナイテッド。次のシーズンも連覇。26シーズンで実に13回優勝と戦績は圧倒的だ。ユナイテッドがプレミア初代王者になったのは、今にしてみれば当たり前に思えるかもしれない。しかし、プレミアが始まる以前にユナイテッドが優勝したのは1967年なのだ。ボビー・チャールトンやジョージ・ベストの時代である。

 プレミアリーグが始まった段階で、マンチェスター・ユナイテッドは優勝候補の1つではあったかもしれないが、優勝して当然というチームではなかった。むしろイングランドで絶対的な存在はリバプールだった。ところが、プレミアが始まるとリバプールは1度も優勝できていない。ユナイテッド以外の優勝クラブも5つしかなく、そのうちブラックバーン(94-95)とレスター(15-16)は青天の霹靂みたいなもの。3回優勝のアーセナルはもう10年以上優勝しておらず、あとは4回優勝のチェルシーと2回のマンチェスター・シティがあるだけ。プレミアリーグはマンチェスター・ユナイテッドのためのリーグだった。

 ユナイテッドが強大化したのは、いちはやく世界有数のリッチクラブになったからだ。プレミア発足の原因は、放送権料の飛躍的な高騰にあった。半分は均等に山分け、残り半分は傾斜配分。1位は20位の20倍の賞金を得る形でスタートしている。プレミア発足後に連覇したユナイテッドはその恩恵を受けた。

 アレックス・ファーガソン監督も最初から名監督だったわけではなく、タイトルを獲れずにクビ寸前だった。FAカップとカップウィナーズカップを獲って信任を得て、プレミア初年度のシーズン途中にエリック・カントナを獲得してチームをグレードアップさせた。カントナ獲得にはリスクもあった。実際、後に観客の挑発に応じて跳び蹴りを入れたカンフーキック事件で長期出場停止処分も受けている。ただ、プレミア開幕のタイミングでカントナ獲得の博打に勝ったことで、ユナイテッドは後の繁栄を築いたといえる。

 Jリーグも今年からの3年間は勝負の時期だろう。連覇でもすれば、莫大な補強資金、観客増、スポンサー増は確実と思われる。ビッグクラブとその他を分ける最初のシーズンが始まった。(西部謙司=スポーツライター)

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