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【コラム】西部謙司

J1と似てきたJ2

[ 2022年4月14日 08:00 ]

声援を送る新潟サポーター
Photo By スポニチ

 2部リーグの試合を見たのは15年ほど前なので現在は定かではないが、当時のフランスリーグ1とリーグ2は隔絶した違いがあった。

 あまりにもパスがつながらないので途中から連続で何本つながるのか数え始めたら、3本つながった回数が両チーム合わせても5回ぐらいしかなかった。1本目がすでにバウンドしていて、2本目はボールが空中。3本目には相手ボールになっていた。どちらもそんな調子なのでほとんどパスワークと呼べるものがない。

 ただ、フィジカルは強烈だった。リーグ1より凄みを感じたぐらいだ。プレッシャーと肉弾戦が強烈なのでパスをつなげないのか、つながらないから肉弾戦になるのかはよくわからないが、コンタクトの強さはハンパなく、これで1シーズンもつのだろうかと思ったものだ。

 ヨーロッパはおよそどの国も似たようなもので、1部と2部では試合内容にかなりの違いがあった。現在は国によってはそうでもないかもしれないが、下部リーグが体力頼みになるのはそう変わっていないのではないか。日本も地域リーグからのし上がっていくには、やはり体力が決め手になることが多いようだ。

 ただし、J1とJ2にはそれほど大きな違いはない。中には下部リーグらしいチームもあるが、蹴り合いの肉弾戦ばかりという試合はあまり見ない。J2も最初のころは下部リーグらしいスピードに技術が追いついていないゲームも多かったが、ここ数年でかなり変化した印象だ。

 今季昇格したジュビロ磐田、京都サンガは何の違和感もなくJ1に溶け込んでいるし、昨季昇格したアビスパ福岡も8位だった。J2のときのプレースタイルをとくに変更することもなく、そのまま普通にJ1で戦えているのが近年の傾向になっている。

 かつてのJ2は守備的な戦術のチームが多く、FWに大柄な外国籍選手などを据え、そこへロングボールを当てて攻撃の起点にすることが目立ったが、それもここ5年ほどで激減している。徳島ヴォルティスや大分はJ2のときからすでにポジショナルプレーを採り入れていて、J1勢とタイミングに誤差もなかった。

 J1とJ2にそれなりの差はあるとしても、プレースタイルや戦術面で大きな差がない。最近のヨーロッパ下部リーグの情勢がわからないので、はっきりしたことは言えないが、もしかしたら日本特有の現象かもしれない。

 J2からJ1のチームに移籍して即戦力として活躍しているケースも少なくない。日本代表にも遠藤航、山根視来、古橋亨梧、中谷進之介といったJ2経験者がいる。プレースタイルに大きな違いがないことが順応しやすさにつながっているのではないか。(西部謙司=スポーツライター)

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