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【コラム】西部謙司

W杯南アフリカ大会のスタイルは「ない」

[ 2013年6月27日 06:00 ]

<日本・メキシコ>メキシコに敗れ、3連敗となり、ガックリの香川ら日本代表
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 コンフェデレーションズカップで強豪国との力の差が明らかになった。日本代表はアジアでの戦いからスタイルを変えずに挑んだが通用しなかった。そこで、W杯南アフリカ大会の時のような守備を重視した戦術に変えるべきではないかという声が、選手の中からも出ているという。

 しかし今回の3試合をみる かぎり、それはあまり意味がない。

 まず、強豪国との力の差はもともとあった。ブラジル、イタリア、メキシコに日本が負けたのは不思議でも何でもない。3試合それぞれの様相は異なり敗因も違うが、総じていえば日本は敵陣での攻守は通用している。問題は自陣での攻守だった。自陣でつなぎきれない、パスミスをする、相手のパスワークをなかなかカットできない、空中戦で負ける、こうした自陣でのクオリティに改善の余地がある。

 つまり、自陣に引いてプレーするのは、わざわざ自ら不得意な戦い方を選択することになり常識的にこれはありえない。

 日本がしなければならないのは、敵陣でのプレーを多くすることである。ただ、そのためには自陣でのプレーの質を上げなければならない。 イタリア戦のように相手が引いて日本が敵陣でプレーする機会が多ければ特徴を出せる。しかし、ブラジル戦とメキシコ戦のようにボールを握られて引かされると、なかなかボールを奪えないので日本のリズムにならない。いかにボールを奪うかが課題だ。

 3試合で日本のポゼッションがアジア予選のように60%を超えることはなかった。そもそもポゼッションが勝敗に重要な意味を持つのは、スペインのように70%を超える「異常値」を出せる場合だ。つまり、日本の敵陣でのプレーを増やしたとしても強豪に勝てる保証はない。だが、勝てる確率を上げるにはそれしかないだろう。

 南アの守備戦術が効果的だったのは闘莉王と中澤の存在が大きかった。逆に前から守るには不向きな コンビだったので、戦術の変更は彼らの特徴を生かせた。もし南ア型に切り替えるなら人選の見直しが必要だ。トップにボールを収められる選手、自陣からドリブルで持ち上がれるDFもいないと、ブラジル戦のようにカウンターができなくなる。

 いずれにしても「こうすれば強豪に勝てる」という特効薬はなく、勝つ確率を上げる努力を続けるしかない。(西部謙司=スポーツライター)

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