将棋界初 小山怜央アマ奨励会経験なしでプロに 東日本大震災で被災も勉強し続け「経験生きている」

[ 2023年2月14日 04:50 ]

将棋のプロ棋士編入試験に合格し、笑顔でポーズをとる小山怜央さん
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 将棋のアマチュア強豪の小山怜央さん(29)が13日、大阪・関西将棋会館で棋士編入試験5番勝負の第4局に臨み、横山友紀四段(23)に133手で勝利した。3勝1敗とし、名人戦順位戦のフリークラスへの編入資格を得た。4月1日付で四段となる。棋士養成機関である奨励会を経ずに棋士になるのは史上初めて。アマからプロに編入した棋士は5人目で、現行制度では3人目。

 大型新人がプロ入りを決めた。試験官の横山を「正統派のきれいな指し回しが特徴で、かなわないなと思った」と嘆息させた。奨励会を経ない棋士第1号に輝いた小山さんは「特別なことで凄く光栄に思います」と少し胸を張った。

 先手で横山の四間飛車を穴熊で迎え撃った。右四間飛車から59手目、飛車角両取りの桂を放って優勢を築く。飛車2枚と角の大駒3枚を手駒に。AI研究の成果で、持ち時間3時間のうち1時間以上の差もつけた。昼食休憩明け、横山の銀冠の背後へ竜を進めて寄せをにらむが、その竜を捕獲されてしまうミスを犯す。

 「普段食らう手ではない。もっと深く考えて指さないと」。リードは縮まったが逆転までは許さず、最後は即詰みに寄せ切った。

 会見では「今考えるとよく決断したなと思う。結果として表れてくれて良かった」と、脱サラしたときの心境を振り返った。16年に三段リーグ編入試験を受けたが不合格となり、プロになる夢を一度は諦めた。岩手県立大を卒業後、リコーのグループ企業へ就職。ところがアマにも出場枠がある竜王戦の6組ランキング戦で4連勝して4強入り。21年4月、退職へ踏み切った。「辞めたのを後悔はしなかったが、勉強するのがつらい時期はあった」と心情を語った。

 8歳で将棋を始め、釜石高2年で東日本大震災を経験した。自宅が津波で流され、半年の避難所生活。その間も将棋の勉強は続けた。「避難所生活ではマイペース。それでも応援してもらえて頑張らないと、と思えた。経験は生きています」。支えてくれた人には、岩手県出身初の棋士という朗報で応えた。

 脱サラを決めた20年度以降の公式戦と、棋士編入試験におけるプロとの対戦成績を15勝4敗、勝率・789とした。「もちろん藤井聡太王将のように強い棋士になりたいが、人として目標にしてもらえる人物になりたい」。最後まで謙虚な言葉を連ねたが、オールドルーキーの躍進を予感させる数字を手に、一歩を踏み出す。(筒崎 嘉一)

 ◇小山 怜央(こやま・れお)1993年(平5)7月2日生まれ、岩手県釜石市出身の29歳。アマチュアでのタイトルはアマ名人戦優勝、アマ王将位大会優勝など。師匠は北島忠雄七段。

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