藤井新王将就位式 未到の8冠へ“完全男”朗希が刺激、28日から叡王戦「去年よりいい内容を」

[ 2022年4月12日 05:30 ]

就位式を終えポーズを決める藤井王将(撮影・会津 智海)
Photo By スポニチ

 将棋の第71期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の就位式が11日、東京都文京区の東京ドームホテルで行われ、藤井聡太新王将(19)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に贈位状、王将盾などが贈られた。1、2月の7番勝負で渡辺明前王将(37)を4勝0敗のストレートで下す快挙を達成。28日から始まる叡王戦5番勝負でのタイトル防衛シリーズを前に、心地よい祝勝ムードを味わった。

 黒紋付き羽織袴(はかま)姿の藤井王将の晴れやかなほほ笑みが場内に柔らかな空気感を醸し出す。「改めて王将位獲得の実感を感じました。主催社や共催の皆さんからの記念品や副賞を頂けてうれしいし、楽しみです」。藤井家の家紋が入った正装で喜びを語った。

 2月12日の王将奪取から2カ月が経過。19歳6カ月での史上最年少5冠。20歳に満たない若者の勇躍はコロナ下の暗いムードを振り払うに十分だった。

 前日の10日には20歳の佐々木朗希(ロッテ)が21世紀初の完全試合を達成。「野球は詳しくないのですが」という藤井だが「同世代の活躍というのはやはり刺激になります」。令和を代表する若者としての共通項に柔らかな笑みを浮かべた。

 民法の改正により今月1日から19歳で成人となった。「まだ実感はないですけど、これを機にそれ以外の偉大な先輩を見習ってもっとやっていければと思います」。大人の決意もいつもの謙虚な姿勢だ。

 戴冠と同時に“学びの番勝負”も回顧。名人、棋王の肩書も誇る渡辺相手に第1、3局は大苦戦を強いられた。「中盤の展開で少しずつ苦しくなってしまうという展開が結構あった。自分にとっての大きな課題でした」。そんな経験を経て、昨年度の対局が終了し、公式戦がなかった3月9日以降の空白期間を“リノベーション”に充てた。

 「対局が立て込んでいる時は相手の傾向などを調べるのが中心。でも今は相手というより特定の局面を絞って、じっくり研究しています」。対人のピンポイントではなく、大局観を鍛える勉強法。多忙な時期でも驚くべき結果を残してきた早熟の達人は「オフ」に確実に力をためている。

 王将戦では恒例の「勝者の記念撮影」でリフレッシュ。「車掌の制服を着るなど、普段できない撮影をすることができて、自分としては楽しくやることができました」と笑顔で振り返った。

 コンディションを整えた藤井は28日開幕の第7期叡王戦5番勝負から新年度の防衛シリーズに突入する。相手は出口若武六段(26)。「対戦経験が少ない方(公式戦2勝1敗)なのでフレッシュな気持ちで臨めると思います」と軽やかに戦闘姿勢をとった。具体的な目標は「去年よりいい内容の将棋を指すこと」と決めぜりふになった決意だ。全8冠を来夏にも「完全制覇」する可能性の香りは、そこかしこに漂っている。

 ▽8冠への最短ロード 今月28日からの叡王戦5番勝負を皮切りに数々の防衛戦がスタート。王座戦挑戦者決定トーナメントも実施される。さらに6月からは藤井にとって初のA級順位戦が開幕。来年1月には王将戦の防衛戦もある。A級順位戦で首位に立てば、3月に名人挑戦が決定し4月からの名人戦7番勝負に登場。ここまで全てのタイトルを守り切り、新たに王座、棋王、そして名人を獲得すれば8冠を達成する。

続きを表示

2022年4月12日のニュース