「カムカム」濱田岳 ダンスシーンに凝縮させた思い

[ 2022年3月15日 08:15 ]

連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第94回で、サンタクロースの衣装で思いをめぐらせる算太(濱田岳)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】15日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第94回で、俳優の濱田岳(33)が演じる算太がダンスを見せる場面があった。

 1993年のクリスマス・シーズン。算太がヒロインのひたな(川栄李奈)の前から姿を消してから既に10年近い歳月が流れていた。

 踊り始めるのは、ひなたが暮らす京都の商店街で、吉右衛門(堀部圭亮)を見たのがきっかけ。姿形が吉右衛門の父・吉兵衛(堀部圭亮の2役)にそっくりなことから、故郷・岡山での暮らしを思い出したのだった。

 演出の安達もじり氏は「表現すべき感情が多いシーンだったので、それなりの時間を要するダンスが必要だった。濱田さんが『ちゃんと踊りたい』と言ってくださったので、そこは真剣勝負で、ダンス指導の先生と相談して、ひとつひとつの動きに意味合いを持たせる振りを作った」と話す。

 この時、算太は70歳を超える年齢。ひなたの父・錠一郎(オダギリジョー)と母・るい(深津絵里)は、算太が病気を患い、衰弱していることをのちに知ることになる。

 安達氏は「リアリティーを考えれば、あそこまで踊れるかという議論もあったが、このシーンでは楽しく踊ってほしかった。最初に構えに入った瞬間からスイッチが入る表現にしようと考えた」と語る。

 この場面には、幻影として、幼い頃の妹・安子(子役の網本唯舞葵)が登場。昔からダンサー志望だった算太に「お兄ちゃん、ダンサーになれた?踊って!」と笑顔で語りかける。

 安達氏は「幼い頃の安子が登場し、途中から現実に戻っているが、濱田さんは『最後まで安子のために踊っていいですか?』とおっしゃった。だから、現実に戻った後も、カメラに映らないところに安子(網本)にいてもらい、算太が彼女に向けて踊っているという仕掛けをした。撮影していて、非常に懐かしく、私自身がホロッとした」と明かす。

 算太は衰弱している様子も見せつつ、商店街の人々の盛り上がりを受け、最後まで踊りきる。

 安達氏は「算太の中では、完全に安子のために踊った。自分がダンサーになれたことを安子に見せたい。安子が楽しんでくれれば自分も楽しく、踊りも進化していく。そんな感じで踊れるといい、という話をした」と語る。

 算太が安子とるいのもとを去ってから40年以上。ずっと胸に秘めていた思いを凝縮させた、濱田の渾身(こんしん)のダンスだった。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年3月15日のニュース