メキシコシティ大会で人種差別と闘った3人の英雄

[ 2021年8月5日 05:30 ]

伊沢拓司
Photo By 提供写真

 【クイズ王・伊沢拓司の五輪の書(13)】今大会のコンセプトにもなっている「多様性」。これを勝ち取ろうと、勇気ある行動に出た3人の男性がいました。

 1968年のメキシコシティー大会。陸上男子200メートルで金、銅メダルを獲得したアフリカ系米国人のトミー・スミス選手とジョン・カーロス選手は表彰式で黒人差別に抗議します。米国歌が流れる中、うつむいたまま黒い手袋をはめた拳を突き上げたのです。IOCからは「政治的宣伝」として追放され、世界中から批判の嵐。家族からも叱責(しっせき)され、カーロス選手の妻は自殺、選手生命も断たれるなど壮絶な仕打ちが待っていました。

 もう1人のメダリスト(銀メダル)である白人のオーストラリア人、ピーター・ノーマン選手にも悲劇が待ち受けていました。表彰式では「人権五輪プロジェクト」のバッジを着け、2人の抗議に同調。これが白豪主義の自国で波紋を広げ、非難が殺到します。職場を解雇され、妻とも離婚、競技で実績を残しても二度と五輪代表に選ばれることはありませんでした。

 米国の2人は「人種差別と闘った英雄」として名誉を取り戻す一方で、ノーマン選手は名誉を回復できぬまま、06年に亡くなってしまいました。

 05年には米サンノゼ州立大学に、2人が表彰台で拳を突き上げている銅像が建立されました。しかし、2位の台にノーマン選手の像はありません。「どうかあなたもここに立ってほしい」という本人の願いからでした。

 2021年、いまだにアスリートへの誹謗(ひぼう)中傷などが問題となっています。相手の立場に立つこと。これこそが、あらゆるあり方の肯定、つまりは多様性への第一歩になるはずです。

 ◇伊沢 拓司(いざわ・たくし)1994年(平6)5月16日生まれ、埼玉県出身の27歳。東大経済学部卒。開成高時代に全国高校クイズ選手権で史上初の個人2連覇。TBS「東大王」で人気に。19年、株式会社QuizKnockを設立しCEOに就任。

続きを表示

「美脚」特集記事

「嵐」特集記事

2021年8月5日のニュース