【矢野阪神 1年目の真実(1)】信念示した敗戦後のインタビューとファンへのあいさつ

[ 2019年10月16日 08:00 ]

試合に敗れてもスタンドのファンにあいさつする矢野監督ら阪神ナイン
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 矢野阪神1年目はレギュラーシーズン6連勝締めで3位に入って逆転でのクライマックスシリーズ進出を決め、ファイナルステージで巨人に敗退して全日程を終えた。1年間密着してきた担当記者が今季を振り返る。

 甲子園での試合後、矢野監督は一塁ベンチ裏から薄暗い通路を抜けた先にある部屋へ向かう。距離にして約10メートル。そこは監督専用のインタビュールームだ。歴代の監督も同様だったが、新指揮官には一つの信念があった。

 「どう伝わったかはわからないけどね。少しでも自分の言葉で伝えたいと思ったんだ」

 歴代監督が拒み続けたことを、最後まで貫いた。それは敗戦後のテレビインタビュー。昨年の金本前監督までは敗戦後の会見でテレビカメラが回されることはなく囲み取材と呼ばれる取材だけだった。そんな中で、指揮官はテレビの前でリアルタイムでメッセージを発信し続けた。

 「そりゃ(負けたときは)嫌だよ。(報道陣から)何を聞かれるかもわからないしね。あとで、もっと“こんな言い方をすれば良かった”とか“あの言葉はまずかったかな”とか思ったりもしたよ。でも、自分でやると決めたことだからな」

 リーグ優勝へ導いた星野仙一監督や岡田彰布監督は勝利後のテレビインタビューでも試合内容によっては怒りをあらわにすることも多かった。監督とは、それほどまでに1試合にかける思いは強いのだ。それが敗戦後となれば表情が曇るのも当然だ。それでも、矢野監督は厳しい現実から逃げることはしなかった。一塁ベンチからの、わずかな時間で怒りや悔しさなどの感情をコントロールして言葉を発した。

 新たな取り組みはもう一つあった。敗戦後もベンチ前に整列して勝利を信じた虎党に頭を下げた。ヤジや罵声を浴びることも日常茶飯事。それでもファンに対し最低限の償いを行動で示した。

 真摯(しんし)な対応は、コーチや教え子に対しても同じだった。長いシーズンをともに戦った1、2軍の全コーチに自腹で高級なオーダースーツをプレゼント。今季の感謝と慰労の気持ちを形で表す粋な計らいだった。

 そのスーツの発注先も昨季限りで現役を引退した西田直斗氏。「必ず俺のスーツを作ってくれよな」。スーツ職人として第2の人生が決まった直後に約束したことも忘れておらず、注文の際には「(17日の)ドラフトで当たるスーツを作ってくれ」と依頼した。

 就任会見でも掲げた「諦めない」「誰かを喜ばせる」といった基本方針通り、奇跡の6連勝締めからクライマックスシリーズのファーストステージを突破。ファイナルステージで巨人に敗れたが、虎党に夢は見させた。攻守に課題は多いが「地道な改革」を、来季は結果として表すシーズンにする。(山本 浩之)

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