【検証由伸政権(2)】選手に寄り添うも…“優しさ”で再建まではできず

[ 2018年10月22日 11:45 ]

3年間V逸の「なぜ」

巨人・高橋由伸監督
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 「細かいことは、これから考えたいと思っています」。15年10月26日、都内のホテルで開かれた監督就任会見。思い描くチーム像を問われた巨人・高橋新監督だったが、まだ、はっきりとした形で答えることはできなかった。

 数週間前には球団側と話し合い、来季も現役続行の意向を確認していた。トレーニングも継続。自主トレ先に予定していた沖縄県内のグラウンドや宿泊先の手配を済ませ、ともに行う予定だった井端と話し、岡本を同行させるプランも練った。

 そこに突然、打診された監督就任。戸惑いはあったが「現役選手の僕に監督を要請した。相当な覚悟があってのこと」と思いをくみ、受諾した。しかし、現実は厳しかった。「引退、即監督」ならではの難しさもあった。

 やはり采配面に苦労が見えた。特に投手起用。ナインからも「あの緊迫した場面であの投手?」「ピッチャーの交代が遅くない?」と疑問の声が漏れていた。選手のことを第一に考え、実行したことが、いい方向に作用しないこともあった。

 例えば、ベンチでは極力、喜怒哀楽を心の中にしまい込んだ。「ベンチの顔色をうかがいながらプレーしないでほしい」との思いがあった。間違った形で当人に伝わらないように試合後の報道陣の取材では、選手のプレーを批判することもできる限り避けた。必要があれば直接、伝えた。

 当初は「失敗を恐れずに思い切りプレーできる」(主力野手)と好評だった。だが、結果が全ての世界。チームの負けが込むと風向きは変わる。劣勢なときほど「失敗を気にせずプレーしてほしい」とスタイルを変えなかったが、「何を考えているのか読めない」といった声もあった。

 1年前までは同じ選手同士だった。これを生かして、寄り添うことを選んだ。岡本をはじめ、若手は台頭した。だが「優しさ」だけでは、チームの再建まではできなかった。 (特別取材班)

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2018年10月22日のニュース