【斎藤隆氏サミーレポート】教育は?将来は?少し複雑な“中卒”結城の渡米

[ 2018年7月20日 11:30 ]

日本選手史上最年少で大リーグに挑戦する結城
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 MLBの海外選手獲得において、いよいよ、アジアのマーケットもキューバやドミニカ共和国と同じような時代がやってきた、というのが正直な感想です。今月初め、ロイヤルズが16歳の結城海斗投手とマイナー契約を結びました。最速144キロの右腕で、シニアの国際大会にも出場。10代の日本人選手が、MLBの球団と契約を交わすのは、彼が初めてではありません。ただ、結城投手のような逸材が直接、米国に行くというのは、日本球界に与える影響は決して小さくないでしょう。

 私が気になるのは、中学を卒業したばかりの16歳ということです。高卒や大卒なら驚かなかったと思います。渡米した後、学校はどうするのか。おそらく、ロイヤルズは英会話の勉強など、サポート態勢を考えていると思いますが、今後、MLBの球団が中学を卒業したばかりの日本人選手を獲得するならば、「教育」の問題を無視することはできないと思います。

 私もMLBの球団に属しているので、優秀な人材がいれば、世界中、どの国からでも欲しいと思います。ただ、それぞれの国には文化があり、日本における「教育」の重要性は、ドミニカ共和国やキューバと同じ物差しでは測れません。マイナーの選手がメジャーにたどり着けるのは、ほんのひと握り。ルーキーリーグから順調に駆け上がったとしても、4、5年はかかるでしょう。もし、17、18歳で契約を解除された場合、どうなってしまうのか。自分も子供を持つ父親なので、複雑な思いはあります。

 一方、日本球界にとっては、10代選手の人材流出は見過ごせないと思います。私の中では、まずは小さい頃から日本の野球を学び、それをベースにして、メジャーへ挑戦するというのが、考え方でした。それだけに、結城投手の「甲子園よりメジャー」という発言は、衝撃的でした。

 プロアマの問題など、日本球界も徐々に変わりつつありますが、現実に起きている動きと、スピード感の違いに違和感を覚えます。結城投手の成功を願うと同時に、これをきっかけに、野球界全体が考える必要があるのではないでしょうか。 (パドレス球団アドバイザー)

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2018年7月20日のニュース