大谷、アンダーウエアへの究極こだわり ユニの下も“二刀流”

[ 2018年7月20日 10:30 ]

アンダーシャツなどを担当する江連さん(右)と試作品の打ち合わせを重ねる大谷
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 エンゼルスの大谷翔平投手(24)のメジャー1年目に密着する「Monthly Shohei」の7月編は、アンダーウエアへのこだわりを解き明かす。右肘の内側側副じん帯損傷から投手復帰へ向け、19日(日本時間20日)の再検査で回復が認められ投球練習再開が可能になった。ユニホームの下に秘められた工夫が復帰後の快投をアシストする。(取材・構成 柳原 直之)

 二刀流解禁は19日の右肘の再検査が待たれるが、ウエアのアドバイザリー契約を結ぶ「デサント」の存在も忘れてはならない。アンダーシャツの着方に特異なこだわりを持つのは「投手・大谷」だからだ。

 大谷と数え切れないほどの打ち合わせを重ねてきた。アンダーシャツは、「肩の引っかかりが気になる」という悩みを同社に相談。試行錯誤を重ね、昨季から本格的に半袖アンダーシャツの上に「アームスリーブ」を着用するようになった。「アームスリーブ」とは着圧式のサポーターのようなもの。一般的に、着圧式のサポーターの効果として圧迫することで血流を促進し、疲労軽減の効果があると言われており、長袖のアンダーシャツに比べて着脱が容易で、寒暖差に素早く対応することができるというメリットもある。

 ただ、大谷の場合は狙いが少し違った。100マイル(約161キロ)以上の剛速球を連発する右肩周りの動きは特に重要で、当然、長袖より半袖が動きやすい。スムーズな腕の振りを繊細に追い求めた。アンダーシャツなどを担当する同社の江連悠次郎さん(33)は「(肩の)“つっぱり感”をゼロにするために究極のところまで考えました。大谷選手のリクエストであるストレスゼロを目指したアイテムです」と説明する。そのため、右肩部分だけくりぬいたアンダーシャツを試作品として作ったこともあった。アームスリーブの両端にはシリコーンではなく、ゴムバンドを付け、ずれ落ちない工夫も凝らした。試行錯誤を繰り返し、大谷が最大限に力を発揮できる形がこの「変則的な重ね着」だった。

 大谷はとにかく「着心地」にこだわる。同社はアンダーシャツの首回りを既製品より、あえて約110%、首(襟端)回りで5センチも広くしたものを独自開発。これも、大谷の「リラックスしたい。なるべく“締めつけ感”“窮屈感”がないように」というリクエストから生まれた特注品だった。素材からこだわり、大谷も素材を選ぶ打ち合わせから参加した。素材とパターン(型)の開発期間は約1年。ストレッチ性を高めながら、従来より15%軽量化したタイプを使用している。

 トレーニング用ウエアを担当する同社の藤原正太さん(31)は「(大谷は)綿のような柔らかい商品で、生地に凹凸感があって柔らかさがあるものを選ばれます。冬のトレーニングシーンでも保温性より動きやすいウインドブレーカーを重視されています」と説明する。一方で、ワンポイントの差し色や柄について大谷は「モチベーションが上がります。気分が乗ってきます」と話しているといい、「着心地」重視でありながら、遊び心もあるウエアの使い分けは大谷の気分転換の一つにもなっている。

 日本より19試合も多い162試合を戦い抜くメジャーリーグ。シーズン中の遠征は飛行機移動で時差も伴う。シーズン終盤の冷え込む時期には「裏地が起毛でありながら汗を吸うタイプ」(江連さん)を使う予定だ。二刀流完全復活へ。もう一度、思い切り腕を振る時は迫っている。

 ≪デサント社も驚く“大谷フィーバー”≫デサント社も「大谷フィーバー」に沸いている。大谷が着用する同社ブランド「スキンズ」のアームスリーブも大谷の活躍後、売り上げが160%も増加。5色展開のハーフスリーブシャツ(税込み4900円)はこれまで白、黒、紺というベーシックな色が売り上げの7割を占めていたが、現在ではエ軍カラーの赤が同4割を占める。藤原さんは「彼が着ている商品を欲しがるお客さまが多い。大谷選手以外では、あまり見たことがない現象」と驚いていた。

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