吉村禎章氏が分析 楽天・嶋のリードが巨人を迷宮へ誘い込んだ

[ 2013年10月30日 10:40 ]

<巨・楽>4回、遊飛に倒れる阿部

日本シリーズ第3戦 楽天5―1巨人

(10月29日 東京D)
 嶋のリードが4点差を守り抜いた。1勝1敗で迎えた日本シリーズ第3戦。スポニチ本紙評論家の吉村禎章氏(50)は楽天・嶋が投手心理、打者心理を巧みに読んで巨人打線を抑え込んだと指摘した。序盤の4点のリードを利した配球が個々の能力で勝る巨人の各打者を惑わせたと分析。3戦を通じて打線に迷いが生じている巨人は、第4戦で流れを変えられるかが今シリーズのカギとなる。

 楽天・嶋は巧みでしたたかだ。打者心理を鋭く読み、投手心理をしっかりと把握する。先発・美馬がアクシデントで緊急降板しても慌てず、失点は矢野のソロによる1点だけ。巨人の強力打線を敵地・東京ドームで「迷路」へ誘い込んだ。

 【4回無死一塁での阿部封じ】楽天は2回に4点を先制。このリードで生まれる打者心理と投手心理を、嶋は実に巧みにリードに取り入れた。その象徴が4回無死一塁で迎えた阿部への配球だ。初球スライダーから入り、3ボール1ストライクとカウントを悪くしても内角のスライダーを空振りさせてフルカウント。外角へ落ちるカーブをファウルさせて7球目、内角高めの直球で遊飛に打ち取った。

 この場面、点差も考えると、打者は外から入ってくる球に初球から飛びつけない。ボールになったが、絶対に狙われない球から入った。ボールが先行しても狙いを外した球でカウントを整え、7球目の内角直球も、通常なら無死一塁のこのカウントから阿部に投げる球ではない。外へ落とすところだ。でも、阿部にとっては予想外の球だから体勢を崩し、コースは甘くても打ち取れた。

 打者はいろいろな状況を想定して狙い球を絞るものだが、序盤に4点差もつくと狙い球がぼやけてしまう。早く点差を縮めたくなり、コンパクトに振るところを長打狙いで大振りになる。まして巨人はシーズン中、序盤に4点を追うような展開はほとんどない。嶋はその打者心理を見透かして競った展開だった1、2戦とパターンを変え、左打者には外のカーブやスライダーから入った。

 投手は大量リードすると早くアウトを欲しがってストライクを投げたがる。嶋はよく理解していて初球、打者の狙いを外した球種、コースから入って簡単にストライクを取った。4点なら1人走者を置いて一発を食らってもまだ2点差。要注意の阿部、高橋由にも緩急を使い、早く点差を詰めたい巨人打線を自分のペースに引きずり込んだ。

 【杉内に2回途中で56球投げさせてKO】楽天打線は徹底されている。厳しいコースはファウルして甘い球を逃さない。杉内の攻略はそうした「粘り」に他ならない。

 立ち上がりの良くない杉内は初回から慎重に投げていた。そこへ先頭打者・岡島が粘って9球目を左前打。1死一、二塁は4、5番の連続三振で逸したが、この回だけで25球。杉内はいいコースもファウルされるから次第にボールが中へ入ってくる。2回はそれを狙い打ち2死満塁から藤田、銀次の連続二塁打で4点である。藤田は難しい低めをうまく打ったし、銀次は甘い球を着実に長打した。粘るだけではない。しぶとさとうまさを兼ね備えている。

 巨人にすれば戦前にイメージしたのは走者をためてジョーンズ、マギーの一発だろう。それが両助っ人以外の打者にしぶとい打撃が徹底されている。3試合で両助っ人に長打ゼロだが、上位も下位もしぶとくチャンスメークする。3戦26イニング攻撃して3者凡退は5回だけだ。杉内には2回途中までに56球を投げさせ、リズムに乗る前に打ち崩した。この球数が楽天の粘りの証明で、上位の左打者3人の出塁率は、このシリーズの勝敗を分ける要素となってきた。

 【3戦連続1桁安打の巨人は迷っている】セ・リーグなら相手投手が強力打線を警戒し、カウントを悪くしてストライクを取りに来たところを捕まえるのがパターン。ところが、この3戦で楽天の投手陣にほとんど失投がない上、嶋のリードに各打者が迷っているように見える。狙い球を絞りきれず、ヒットにできる球を待ちきれないのだ。「後追い」という現象で、迷いが打ち損じも生む。唯一の得点は8回の矢野の本塁打。思い切りのいい矢野だから、嶋のリードに惑わされず甘い球を打てたのだろう。

 3戦で本塁打以外の得点は初戦の長野のタイムリーだけ。本拠地に戻っても打線が振るわず、チーム安打が初戦から4、3、6本という状況は想定外だろう。ただ、慌てることはない。シーズンでも個の能力で苦境を打開した。チームで何かをするのではなく、自分の力を信じて迷いを消すしかない。それができる力は全員持っている。

 流れを変えないといけない第4戦。先発ホールトンがカギを握る。打線が点を取るまで踏ん張れるか。シリーズの行方を決める試合になる。

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