オリ・中嶋監督、イチロー、仰木氏に続く球団3人目正力賞 恩師に朗報も「褒められないんじゃない?」

[ 2022年11月9日 05:00 ]

 正力松太郎賞を受賞し、色紙を持つオリックスの中嶋監督
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 今季のプロ野球の発展に最も貢献した監督や選手に贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が8日、東京都内で行われ、オリックスを26年ぶりの日本一に導いた中嶋聡監督(53)が初受賞した。球団では96年の故仰木彬氏以来26年ぶり3人目。また、日本人最多56本塁打を記録するなど3冠王に輝いたヤクルト・村上宗隆内野手(22)が特別賞に選ばれた。

 天国できっと喜んでくれたはずだ。くしくも26年前に、チームを日本一に導いた仰木さんが受賞して以来となる球団3人目の正力賞。秋季キャンプが行われている高知市内で会見した中嶋監督は、感慨深げに振り返った。

 「イチロー君ですよ、仰木さんですよ、すごいです。そこに名前があっていいのかな、オレ。(仰木さんには)褒められないんじゃない? (報告するとしたら)優勝しました、くらいです。この賞は全員で獲った賞で、その代表として僕がもらったわけですから」

 05年に亡くなった仰木さんに褒められた記憶はないが、イズムは染みついた。打順は143試合141通り、日本シリーズ7試合で6通りの猫の目打線。継投もさえた。育成出身の2年目右腕・宇田川をはじめ、勝ち継投を固定しないことで満遍なく経験を積ませ盤石の救援陣を築き上げた。データに直感を加えたマジックだった。

 「自分では、大胆(な采配)ではないと思っていますけどね。ビビリなんですけどね」

 選考では、10月26日の日本シリーズ第4戦での宇田川、山崎颯の救援起用を含めた手腕を絶賛する声があがった。史上最年少3冠王のヤクルト・村上を推す意見もあった。指揮官は「村上君や山本由伸、3冠王と2年連続投手4冠という、あの2人はインパクトで言えば間違いなく凄いところにいるので。いいのでしょうか、私で」と独特の言い回しで振り返った。

 就任当時から掲げるのは「勝利と育成の両立」。この日も高知東部球場で、紅林や来田ら若手に打撃指導した。「若い子の底上げは必要だし、出てこないといけない。チームとして力は付いてきていると思うけど、強いと思ったことはない。力が付いてきている今、やるべきことをやる」。伝統を継承し、さらに積み上げる。指揮官が旗振り役だ。(湯澤 涼)

 ≪意見が大きく分かれた選考経過≫中嶋監督か、村上か。選考委員会では意見が大きく分かれ、激論が交わされた。新型コロナウイルス感染で欠席した王貞治委員は委任状を提出。「圧倒的なインパクトがあった。正力賞にふさわしい」と、自身の55本塁打を超える日本選手最多の56号、そして3冠王に輝いた村上を推薦。座長を務めた山本浩二委員も「22歳で成し遂げた3冠王の偉業は正力賞に値する」と同じく村上を推した。

 一方で杉下茂委員は中嶋監督の采配を高く評価し「日本一を中嶋監督の力で勝ち取った」。門田隆将委員も中嶋監督を推し、意見が分かれたことから10年ぶりの2人同時受賞も話題に上がったという。その中で昨年に続いて特別賞を設けることが決まり、最終的に歴代でも監督が多く受賞していることから中嶋監督が正力賞、村上が特別賞に決定した。

 「私は野手出身なので村上選手を推した。それぞれの意見をかなり出し合った」と山本座長。過去にないほど難しい選考だったかと問われ「だと思います。皆さん悩んだと思う」とした。

 ▽正力松太郎賞 日本のプロ野球の発展に大きな功績を残した故正力松太郎を記念し、1977年に制定された。プロ野球界に貢献した監督、コーチ、選手、審判員を対象に選考委員会が選出する。賞金500万円。受賞者は日本一に輝いた監督が多い。第1回の受賞者は77年に世界記録の756号本塁打を放った王貞治(巨人)。

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